百田尚樹「逆境」を楽しめ! 「幻庵 上巻・下巻」同時刊行(文藝春秋)

 週刊文春で、2015年1月8日号から始まった、百田尚樹著『幻庵(げんなん)』が、2016年11月10日号の第91回で最終回となっています。
 
 週刊文春 1月5日・12日号 新年特大号の169㌻の見出し記事に、碁会最高権威「名人碁所」の座をめぐる、男たちの命懸けの勝負の行方――と書かれている、『百田尚樹 幻庵(げんなん) 上・下』を見つけました。
 
 週刊文春の同じ号に、百田尚樹「逆境」を楽しめ!と題した記事が4㌻にわたって掲載されています。

 その出だしは次の言葉で始まっています。
《 幕末の棋士、幻庵因碩(げんなんいんせき)を書きたい。小説家になったときから、ずっとそう思っていました。
 幻庵はまごうかたなき天才でしたが、不遇でした。しかし、どんなに辛酸をなめても決してあきらめません。幻庵の碁には彼の性格が表れていて、窮地に陥っても、常に逆転の手を狙い、簡単に勝負を投げません。
 最後の最後、刀折れ矢尽きるまで闘う。私はそういう人物が好きなんです。・・・》

 その後の文章は一転して、『海賊とよばれた男』〈※〉の主人公、国岡鐡造のモデル、出光佐三のことに話を持っていっていますが、ここでも、どんなに逆風が吹いてもあきらめない男の生きざまを述べています。

 (〈※〉『海賊とよばれた男』『百田尚樹原作)の映画は上映中ですが、昨年一人で見ましたので、今年は二人で見に行きたいと思っています。
 〈※〉2016年12月29日(木) 午後10時30分から放送の、NHK・BSプレミアム「日本のVFXを変えた男 ヒットメーカー 山崎貴の挑戦」あっという間の60分でした。☆映画『海賊とよばれた男』の制作過程における山崎監督のこだわりの現場など、とても印象深く感じました。)
 

 さて、私は囲碁のイロハどころか、「イ」の字も知らない人間ですが、週刊文春連載中の『幻庵』は第1回から第91回までの全てを端から端まで読みました。その書き手の文章に引きずり込まれていったからに他なりません。

 百田尚樹氏は、週刊文春最新号に、《 しかし、ここで私は困ってしまいました。幻庵の魅力をどう書けば「読者を楽しませる」ことができるのか、それがわからなかたのです。 》と、小説にしたいと思っていながら、長い間書くことができなかった心境を述べています。

 それではどうして週刊誌に載せるシリーズとして書くことができるようになったのか、引き続いて文章を追ってみます。

 《 いま、日本の囲碁人口は、全国民の1パーセントくらいでしょう。そのなかで、江戸時代の碁に興味がある人は、さらに少ないはずです。普通のやり方で書いても、読者はまずついてこれません。それで長い間、幻庵を書くことができませんでした。
 ところが、私が江戸時代の碁界の話をすると、碁にまったく興味がない人でも皆「面白い」と夢中で聞いてくれるのです。それである時、ふと思いました。しゃべっているように書けばいいんじゃないか。と。囲碁を知らない99パーセントの人たちに向けて、ふだん私がしゃべっているように、現在の視点や解説、私の感想を交えながら書いていったのが『幻庵』です。 》

 週刊誌の連載が終わった後、何度も手を入れ、そして書いていて本当に楽しい作品だったと作者が読者に伝えた『幻庵」は、単行本として2016年12月31日に株式会社文藝春秋社より第1刷が発行されました。

幻庵 上 百田尚樹

幻庵 下 百田尚樹


 百田尚樹氏の幻庵に対する思いを語った箇所を引用して、今日のページをお仕舞にします。

《 幻庵は晩年に「碁は運の芸なり」という言葉を遺しました。碁というゲームを極めた幻庵の人生哲学がここにあらわれています。幻庵は名人になれる程の力量を持ちながら、ここ一番の大勝負ではことごとくうまくいかなかった。
 幻庵の生涯は失敗や挫折の連続でしたが、幻庵は幸せな人生だったのではないかと私は思っています。
 ・・・ 
 私は、最終的に「自分の人生、楽しかった」と思えれば、勝ちだと思います。それまではいくら負けてもいい。そう考えると、逆境や敗北感を楽しめる気持ちになれるはずです。 》








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週刊文春 11月10日号 幻庵 最終回

 2015年1月8日号〈※〉から始まった、週刊文春掲載の、百田尚樹著『幻庵(げんなん)』が、2016年11月10日号の第91回で最終回を迎えました。

(〈※〉1月15日号の【前回までのあらすじ】の末尾には、「・・・この物語は、江戸後期の文化・文政時代から幕末にかけて、碁会最高権威の[名人碁所]の座をめぐり、男たちが死闘を繰り広げた記録である。・・・」と、書かれています。)


 第90回では、安政6年(1859年)8月、因碩(=幻庵)の死を記しています。《・・・四家の家元と跡目、そして多くの碁打ちたちが参列する盛大な葬儀であったと伝えられる。》で、締め括っています。

 最終回は、幻庵亡き後、狂瀾怒濤の世にあっての碁界の変遷を辿り、そして、四つの家元のその後を駆け足で通り、この物語を昭和の時代までで幕を降ろしています。

 名人碁所の願書を出す、その一つをとって、争碁のみならず、これほどまでに家元と家元との間における盤根錯節の如き様相が、読む者に伝わってくる、作家の筆勢にただただ驚愕感嘆するばかりでした。
 

  
 明治の時代に入り、旧来の家元制度では囲碁の未来はないとみた、本因坊秀和の弟子、秀甫が「方円社」という組織を新しく興します。
 秀甫は、同時代のすべての棋士を定先以下に打ち込むという桁外れの強さを発揮し、周りから「名人」に推挙されますが、彼は顔を真っ赤にして拒絶したという、ここの一連の文章が心に余韻を残します。
 百田尚樹は、《尊敬してやまない師の秀和がついになれなかった名人位に、自分ごときが就けるかという思いであったのだ。》と心を描写しています。
 その心情に深く思い至ったこととあわせ、私の心に余韻を残したという意味は、もう一つあります。
 今までの物語では、その実力の証左とあわせ、「名人」になるための権謀術数渦巻く世界を物語ってきました。例外なく「名人位」は垂涎の的であって、誰一人として「名人位」を辞退〈※〉するなどということはよもや思いもよらない囲碁の世界なのにもかかわらず、秀甫がそれを固辞したというこの一点に、くぎ付けにされました。


〈※〉追補:双璧をなし、お互いを認め合った棋界の最高峰だった当時の二人の碁打ちについて、「どうなのか・・・」というお問い合わせがあったことを付記させた頂きます。


囲碁殿堂入り 幻庵因碩


 《小誌で大好評連載中の小説「幻庵(げんなん)」の主人公、井上幻庵因碩がこのたび囲碁殿堂入りを果たした。
 「幻庵因碩は雄渾という言葉がぴたりと合う棋士でしたが、同時代に本因坊丈和というバケモノがいたこともあり、権謀術数を駆使しながらも、ここ一番の闘いにはことごとく敗れた。不運な棋士ですが、『囲碁妙伝』などの書物を残し、さまざまな逸話がある人物です。」(日本棋院の福井正明九段)
 囲碁殿堂とは、囲碁の普及と発展に貢献した人物を顕彰するために日本棋院が設立したもの。有識者や棋士らによって選考される。ちなみに、過去に殿堂入りしたのは、徳川家康や、本因坊家の始祖で一世名人の算砂、”碁聖”と呼ばれた本因坊道策ら、錚々たる面々だ。
 「幻庵はこれまでに何回もノミネートされてきましたが、百田尚樹先生が小説に書き、囲碁ファンの間でブームになったことで、今回、寛蓮(かんれん)(『源氏物語』に碁聖大徳と書かれている僧)とともに殿堂入りすることになりました」(同前)
 幻庵の顕彰レリーフは来年三月末に東京・市ヶ谷の日本棋院本殿で行われる合同表彰式にてお披露目され、同院会館地下一階の囲碁殿堂資料館にて展示される予定だ。》

出典:『週刊文春 9月1日号』53㌻
「この人のスケジュール表 
  ・カレーと音楽の共通項 小宮山雄飛. 
  ・切なさ120%の美しい声 上白石萌音.
  ・囲碁殿堂入り 幻庵因碩       」


 今号(9月1日号)週刊文春の、百田尚樹著『幻庵』は、第81回となりました。
 《 天保十年(1839年)、十一月の晦日、本因坊丈和は名人碁所の退隠届を寺社奉行に提出し、
・・・
 本因坊丈和が碁所を退隠したという知らせを聞いた時、井上因碩は不思議な運命の流れを感じた。
 一度は完全に諦めた名人碁所の道が再び開かれたのだ。・・・》




  スクリーン   スクリーン   スクリーン
『君の名は。』8月28日全国公開
上白石萌音(かみしらいしもね)
上白石萌音①

 

 師走の風

 昨日、本屋のはしごをしました。
 岩合光昭の2016年版「のら」のカレンダーを買い求めるためです。
 二軒目で見つかりました。
 一軒目の書店では、世界地図の入った2016年版のカレンダー(89cm×71cm)を頂きました。
 相棒は、「現代用語の基礎知識2016」など12冊を袋に入れてもらいました。私は「フォルトゥナの瞳」の1冊です。週刊新潮の連載小説が文庫本になったものです。

 週刊文春に連載されている、百田尚樹の「幻庵(げんなん)」。きょう木曜日の発売で第46回を数えます。「名人碁所の座をめぐり死闘を繰り広げた男たちの記録」。これから佳境に入っていきます。
 「フォルトゥナの瞳」の週刊誌掲載回数よりも、ずっと長い連載小説となりそうな予感がします。
 

フォルトゥナの瞳 百田尚樹 表紙

フォルトゥナの瞳 百田尚樹 カバー説明



祖父母の人生を思う 作家から

 HONライン倶楽部 百田尚樹の巻

 昨日、私の作家デビュー作である『永遠の0』の映画が公開された。物語は神風特攻隊として亡くなった祖父はどんな男だったのかを、現代に生きる若者が戦友を訪ねて調べるというものだが、実はこの小説が出版されたのは7年前の2006年だ。
 実はこの小説を書いているとき、私の父は末期ガンで余命半年と宣告されていた。その1年前に伯父の1人がやはりガンで亡くなっていた。父も3人の伯父も第2次世界大戦のアジア・太平洋の戦場で「大東亜戦争」を戦った男たちだった。その時、「ああ、あの戦争を戦った男たちが日本から消えていくのだな」と思った。
 幼い頃より、父や伯父たちから戦争の話はいつも聞かされていたが、父は私の子供たちにはついに戦争の話は一度もしないで死んだ。従兄弟たちに聞いても、「そういえば、親父は孫には戦争の話はしなかったなあ」と言った。そう、実は多くの戦争体験者たちは子供には戦争を語っても、孫たちにはほとんど語っていないのだ。60年という年月は記憶と思い出を隔絶させていたのだ。
 私が『永遠の0』を書いた動機はそこにあった。神風特攻で亡くなった主人公は私の父の世代である。そして彼の孫は私の子供の世代である。つまり私は物語の中で二つの世代を結びつけたいと考えたのだ。
 『永遠の0』を読んでくれた若い世代がネットやブログで「おじいちゃんたちに、なんで話を聞いておかなかったんだろう」という感想をアップしているのを見ると、切ない思いがするのと同時に、彼らが祖父母の人生に思いを馳(は)せてくれたということを嬉(うれ)しく思う。
 映画は素晴らしい出来で、歴史に残る傑作と思う。



 語りのうまさ 多彩な作品
 今年の本屋大賞に選ばれた『海賊とよばれた男』(講談社)が上下巻計170万部、映画化もされた『永遠の0』(講談社文庫)が380万部と、当代有数のベストセラー作家への階段を一気に駆け上がった百田尚樹さん。その勢い同様、熱い思いのこもった投書が多数届きました。

・『永遠の0』(講談社文庫):千葉県館山市の52才女性さん、「戦争ものだし、すごいベストセラーなので敬遠していた」「語りのうまさに途中でやめられなくなった」。福島県会津若松市のん15才女性さん、「臆病者」とさげすまれても家族のために「死ねない」と言い続けた祖父がなぜ、特攻を志願して死んでいったのか。やがてあきらかになる真実に多くの方が号泣しました。大阪府枚方市の38才女性さんは、「この本は立派な反戦小説だと思います」。
・『影法師』(講談社文庫):横浜市の69才女性さん。〈磯貝彦四郎殿は亡くなっておられました〉。将来を嘱望されていた男が、どうして不遇の死を遂げたのか。その理由に心を揺さぶられた。「私が死んだら棺に入れてほしい」と息子さんに伝えたほど。
・『幸福な生活』(祥伝社文庫):埼玉県川越市の48才女性さん。宇都宮市の67才男性さん。「最後の1行で『おおっ』と声を上げてしまうほどの急転直下の結末」。
・『風の中のマリア』(講談社文庫):新潟市の62才女性さん。「種族のために一心不乱に働くハチの健気(けなげ)さに夢中になり、このストーリーで人間の失ったモノを見つけられたような気がします」。


・・・『輝く夜』、『モンスター』、『海賊とよばれた男』は、小説のタイトルは載っていましたが、内容を語っていませんので、補足いたします。
・『輝く夜』(講談社文庫・太田出版刊『聖夜の贈り物』を改題、文庫化):5つの短編集が収められています。何れもクリマスのときのことです。『永遠の0』に続く二作目です。解説―「語りの人」―で、岡聡は、「百田尚樹が小説を書く上で強烈に意識し自身でも表明していることがある。〔希望のある話を書きたい〕ということだ。今の時代にこれほど明快に小説の目的に「希望〕を語る小説家は珍しい。だからこそ百田尚樹はそう思って小説を書いているし、そのために小説を書いていている。」と記述しています。

・『モンスター』(幻冬舎文庫):整形美女の狂おしいまでの情念の物語。解説は中村うさぎ。「そして、ヒロインはついに美貌を手に入れる。喉から手が出るほど欲しかった男たちからの賞賛、女たちからの羨望を、彼女は一身に浴びるのだ。…」と書いた5行後に、「しかしまぁ、美女となったヒロインに対する男たちの態度は、なんと滑稽に描かれていることだろう。…」とも述べています。

・『海賊とよばれた男』(講談社):昭和28年、サンフランシスコ条約からまだ1年にも満たない時代に、日本の小さな石油小売会社が、大英帝国と強大な国際石油メジャー相手に、真っ向から戦いを挑んだ。なぜか、歴史から消し去られた「日章丸事件」。主人公の熱い思いがストレートに伝わってきます。


・『ボックス!』(講談社文庫、上下巻):讀賣新聞〔HONライン倶楽部・百田尚樹の巻〕担当記者「好対照な幼なじみ二人が、同じ高校のボクシング部に入り、共に成長する様を描く熱い熱い青春ドラマ。リング上の臨場感と、揺れ動く二人の心情描写の見事さに、ノックアウトされました」。

ひゃくた・なおき
 1956年、大阪生まれ。放送作家としてテレビ番組「探偵!ナイトスクープ」などを担当する。50歳になる直前の2005年暮れ、「昔なら人生50年、もう終わりやん、僕の人生」と思い一念発起。作家になる決心をして『永遠の0』を書き始め、翌06年、作家デビューを果たした。

  2013年(平成25年)12月22日(日曜日) 讀賣新聞



永遠の0   影法師

幸福な生活   風の中のマリア

輝く夜   モンスター

海賊とよばれた男・上   海賊とよばれた男・下

ボックス・上   ボックス・下

・・・

次の3冊は今回の「百田尚樹の巻」に推薦されていませんでしたけれど、何れも読み応えのある作品でした。一行書きで紹介します。
・『夢を売る男』(太田出版」:本の出版を夢見る人間たち、一人ひとりの物語。…出版業界のタブーもなんのその…
・『プリズム』(幻冬舎):「解離性障害」を根っこにとらえた恋愛小説?…
・『錨を上げよ』(講談社):疾風怒濤の青春小説。まるで百田尚樹自らを語った自分史のような2400枚に及ぶ長い長い物語。  


夢を売る男   プリズム

錨を上げよ・上   錨を上げよ・下




プロフィール

むさしの想坊

Author:むさしの想坊
 これから何が飛び出してくるのでしょうか。ひきだしの奥にしまっていたものと合わせ、足跡を綴っていきたいと思います。
 昨日は金環日食をみることが出来ました。
・東京スカイツリー開業日の2012年5月22日記。

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