9月

2014/ 09/ 03
                 
 ひと声、「みゃう」と鳴いて、日影でお昼寝を決め込んでいた「ミユ」が近寄ってきました。
 9月。
 陽だまりといっては、まだまだ暑さが残る午後のひととき。
 窓から射しこんでくる陽光の中に、後姿でポーズをとったミユ。
 ちょっぴり短いミユの影が、ほんのちょっとのお昼過ぎを表していました。
 
 撮影が一段落した頃合を見計らって、「みゃう」とひと声鳴いて、座った私の足許に体を預けに来たミユ。
 ピンと立った尻尾を私の腕に当ててきます。

 私を見上げて、また、「みゃう」とひと声鳴いて、風通しの良い日影に戻っていきました。


2014年9月2日の「ミユ」
 





                 
        

秋の詩 直子

2013/ 10/ 01
                 
 工藤直子の雲をよみこんだ詩も素敵です。



工藤直子 秋になると

秋になると
木の実は うれしくなる
いちばん いい様子をして
(見てちょうだい)と

あっちこっちに 声をかける
そして 自分から
ひかりはじめる




                 
        

秋の詩 白秋

2013/ 09/ 28
                 
 
 歌にもなっているからでしょか。島崎藤村の詩「初恋」の一節をそらんじている方もいらっしゃると思います。
 北原白秋の詩「初恋」は、詩集「想ひ出」の中に6行さりげなく入っています。

薄らあかりにあかあかと踊るその子はただひとり。
薄らあかりに涙して
消ゆるその子もただひとり。
薄らあかりに、おもひでに、
踊るそのひと、そのひとり。



 「水墨集」の中から秋を拾ってみました。

北原白秋 初秋の空 二階の書斎より

ああ、あの瑠璃(るり)の満ち満つ
空の深さ。
ああ、この緑と薄黄(うすぎ)との
輝く孟宗(まうそう)を透(す)かして。

未(いま)だに激しい残暑(ざんしょ)の陽射(ひざし)、
つくつくほうし、
しかもいち早い秋の微風(びふう)は
揺(ゆ)れうごく笹(ささ)のしだれを超(こ)す。

あ、揚羽(あげは)が来た、黒い翅(つばさ)を張って、
ひらきらと潜(くぐ)り抜ける。
親しい、それも厳(おごそ)かな
吹かるる、おのづからの姿。

季節は風と光に乗る、
凡(すべ)ては流るる、有(あ)りの儘(まま)に。
まかせよ、さながらの薫(かを)りを、
まかせよ、寂(さ)びと獟(しを)りと。

ああ、あの瑠璃(るり)の満ち満つ
空の深さ。
ああ、この緑と薄黄との
輝く孟宗(まうそう)を透(す)かして。




「落葉松」と書いて「からまつ」と読む、白秋の詩。
 歌になっているということもあるのでしょう、世代を超えて親しまれている詩の一つです。
 「一」から「八」まであります。

北原白秋 落葉松

 一

からまつの林を過ぎて、
からまつをしみじみと見き。
からまつはさびしかりけり。
たびゆくはさびしかりけり。

 二

からまつの林を出(い)でて、
からまつの林に入りぬ。
からまつの林に入りて、
また細く道はつづけり。

 三

からまつの林の奥も
わが通る道はありけり。
霧雨(きりさめ)のかかる道なり。
山風(やまかぜ)のかよふ道なり。

 四

からまつの林の道は
われのみか、ひともかよひぬ。
ほそぼそと通(かよ)ふ道なり。
さびさびといそぐ道なり。

 五

からまつの林を過ぎて、
ゆゑしらず歩みひそめつ。
からまつはさびしかりけり。
からまつとささやきにけり。

 六

からまつの林を出(い)でて、
浅間嶺(あさまね)にけぶり立つ見つ。
浅間嶺にけぶり立つ見つ。
からまつのまたそのうへに。

 七

からまつの林の雨は
さびしけどいよよしづけし。
かんこ鳥鳴けるのみなる。
からまつの濡(ぬ)るるのみなる。

 八

世の中よ、あはれなりけり。
常(つね)なけどうれしかりけり。
山川(やまがは)に山がはの音、
からまつにからまつのかぜ。



日本詩人全集 7 北原白秋 新潮社刊・所収




                 
        

秋の詩 心平

2013/ 09/ 26
                 
 「宮沢賢治」を世に出したのが草野心平です。
 賢治を世に知らしめるための心平の心血を注いだ努力の積み重ねにより、こんにちの「宮沢賢治」が誰からも愛されるひととなっています。
 心平は「中原中也」とともに「歴程」を発刊。詩壇に大きな足跡をしるしています。
 わが母校の校歌は、草野心平の作詞です。
 群馬県立中央中等教育学校の校歌として、今も受け継がれています。



草野心平 秋の夜の会話

さむいね。
ああさむいね。
虫がないてるね。
ああ虫がないてるね。
もうすぐ土の中だね。
土の中はいやだね。
痩(や)せたね。
どこがこんなに切ないんだろうね。
腹だろうかね。
腹とったら死ぬだろうね。
死にたかあないね。
さむいね。
ああ虫がないてるね。



草野心平 秋

左右満潮の川にはさまれ。
突堤のはては鉛の海。
枯れ葦(あし)にとまって百舌鳥(もず)。
ハガネの声は空気をつんざき。
その亀裂(きれつ)にそそぎこむ秋。

秋のはるか。

白い永遠。




日本詩人全集 24 金子光晴・草野心平 新潮社刊・所収




                 
        

秋の詩 犀星

2013/ 09/ 26
                 
 室生犀星、草野心平など詩人たちが前橋の萩原朔太郎を訪れています。
 滞在日数も、月、年とまちまちです。
 犀星は長逗留ほどの在で、二度目の上州行では赤城山の麓の温泉で養生をしていました。
 生活の糧を得て生活もしたのが心平でしたが、その後、郷里の福島に戻り、そして再び上京します。



室生犀星 月草

秋はしづかに手をあげ
秋はしづかに歩みくる
かれんなる月草の藍(あい)をうち分け
つめたきものをふりそそぐ
われは青草に座(すわ)りて
かなたに白き君を見る



室生犀星 暮日

夕となれば悲しといへる人に
いくたり今日あひけむ。



日本詩人全集 15 室生犀星 新潮社刊:所収