蜜蜂と遠雷(第156回直木賞受賞作) 著者恩田陸 発行所幻冬舎

2017/ 03/ 21
                 
  第156回直木賞受賞作となった恩田陸氏の小説『蜜蜂と遠雷』は、株式会社幻冬舎から2016年9月20日付で、第1刷が発行されています。
私の手元にあるのは、2017年1月25日発行の第10刷版です。
いま、他に3冊読み進めている書籍があるということもあり、この本はまだ目を通していません。508(507)ページに及ぶページ数が、最近購入した本の中で一番多かったということも、その要因の一つかも知れません。来週中には2冊読み終わりますので、そのあと一気呵成に読みたいと思っています。
 
 そうはいっても、私は恩田陸という作家のお名前は今まで見聞きしていましたけれど、まだ一度も氏の作品を読んだことがありません。

 ということもあり、先ずは作家恩田陸とはどういう人物なのか、『蜜蜂と遠雷』はどういった小説なのか、はてまた、読者はこの本にどういった感想を持ったのか、幻冬舎の公式サイトをのぞいて事前知識を得ておくことにしました。

蜜蜂と遠雷 恩田陸 幻冬舎


《「特設ページ」:直木賞に決定!恩田陸『蜜蜂と遠雷』

 ~構想から12年、取材11年、執筆7年。ピアノコンクールを舞台に、人間の才能と運命、そして音楽を描き切った青春群像小説。~


 ◇あらすじ
私は、まだ音楽の神様に愛されているだろうか。

3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール。
「芳ヶ江を制した者は世界最高峰のS国際ピアノコンクールで優勝する」ジンクスがあり近年、覇者である新たな才能の出現は音楽界の事件となっていた——。

自宅にピアノを持たない少年・風間塵16歳。
天才少女としてCDデビューもしながらも、母の突然の死去以ピアノが弾けなくなった栄伝亜夜20歳。
音大出身だが今は楽器店勤務のサラリーマン 高島明石28歳。

完璧な優勝候補と目される名門ジュリアード音楽院のマサル・C・レヴィ=アナトール19歳。

彼ら4人をはじめとする数多の天才たちが繰り広げる競争という名の自らとの闘い。
第1次から3次予選そして本選を勝ち抜き優勝するのは誰なのか?



 ◇著者紹介:恩田陸
 1964年、宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』でデビュー。2005年『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞および第2回本屋大賞を受賞。06年『ユージニア』で第59回日本推理作家協会賞を受賞。07年『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞を受賞。著書多数



 ◇担当編集者より
「構想12年、取材11年、執筆7年」とは『蜜蜂と遠雷』のプレスリリースや新聞広告で使ったフレーズで、恩田陸さんの担当歴20年以上になる私にとっても半分以上の年月この作品に携わり、3分の1の年月、月刊連載原稿の催促を続けていたことになります。

長く一つの作品にかかわるといろいろなことがあるわけで、その最大が3年に1回、開催される浜松国際ピアノコンクールへの4度もの取材です。ふつうは4度も取材しません。取材といってもバックステージを観察するようなことはほとんどなく毎日、会場の座席に身を沈め朝9時から夕方まで審査員でもないのにひたすらピアノ演奏を聴き続けるだけです。2回目以降、毎度「先生また行きたいんですか!?」と呆れたふりをしながらも、じつは無類のクラシック音楽好きの私は、しめしめとひじょうに楽しみにしていました。まさに役得です。

この作品で私がやったことは原稿の催促以外なにもありませんが、4度の取材には音楽好きの私でなかったら、つきあえなかったかもしれません。それが作品のコクのようなものになっているといいのですが……。



 ◇全世代から感動が寄せられている1冊!です。

  ・音楽を聴いた時に浮かぶ情景や感情を、どうしたらこんなに言葉にできるんだろう……。
加えてコンペティションのスリル。圧倒的でした。(40代女性)

  ・読んでいる間、ずっとわくわくしていました。上手く言葉がまとまりませんが、この作品を読めて幸せでした。(20代女性)


  ・読みはじめてすぐに「これこれ! こんなのが読みたかった!」と喜びに震えました。この本は、音楽やピアノのことを知らなくても本当に楽しめる作品だと思います。(40代女性)


  ・登場人物は十代から二十代の若者なのに、その生き方は、五十代の私の何倍にも凝縮された濃密なものでした。
 まだまだ進化していく中で、挫折や不安も感じていくのだろうと、それぞれの未来を感じさせる読後感でした。(50代女性)


  ・久し振りに「小説」を読んだ! という気持ちになりました。「読んだ」というより、「どっぷり浸かった!」といったほうが正解かもしれません。「面白い」というより、「ぐんぐん引っ張られた!」というのが実感です。(80代女性)


  ・本屋で見かけたときは、分厚い上に1ページの文字数は多いので読むのが大変そうだと思っていたのですが、序章からすぐ物語に引き込まれ、寝る間を惜しんで読みふけってしまいました。
途中からは、どうして残りページがこれしかないのかともどかしく思ったほどです。(30代男性)


  ・努力する天才ばかりが出てきて、自分ももっと頑張ろう、好きなことは勇気を出してやろうと思いました。クラシックが大好きになるお話です。(10代女性)


  ・美しい音楽が頭の中で流れる、素晴らしい小説をありがとう。ずっと大切にしたい、宝石のような小説でした。留学中の孫の姿に重ね、涙がこぼれました。若い人にたくさん読んでほしいです。(70代女性)


  ・最後に誰が栄冠を勝ち取るのか、だけが大切なのではないと気付かされます。 自分の才能を信じて打ち込む姿は、誰かを応援することができる。一生、心に残る小説だと思いました。(60代男性)









                 
        

中野信子氏によるサイコパス 私の知ったこと

2017/ 03/ 06
                 
 『サイコパス』「第3章 サイコパスはいかにして発見されたか・精神分析の失墜と脳科学の台頭」の文中、ジークムント・フロイト(1856年5月6日–1939年9月23日)の精神分析学の業績を、いとも簡単に《注意深く読めば科学的証明に乏しい、反証可能性があるとは言いにくい理論であることがわかります。》(123㌻)と、中野信子氏は、脳科学者の立場からひと言で片付けています。
 そのこと(サイコパス)は、精神分析学の範疇ではないということも端的に言い表したいということにもつながるのでしょうか。
 そして、氏は、私は脳科学者ですから、やはり遺伝的要因のほうを重視していますという前置きのもと、《・・・だとすれば、サイコパスになる原因としては、後天的要因よりも遺伝的要因の影響のほうが大きいはずです。》と、145㌻で述べています。

サイコパス 中野信子著


 サイコパスは、アメリカの全人口の4パーセント(〈※〉)(心理学者マーサ・スタウト氏による)にものぼるといいます。

〈※〉『診断名サイコパス」で有名なカナダの犯罪心理学者ロバート・ヘアによれば、男性では全人口の0.75%がサイコパスだとされています。
 中野氏はそれらの文献を引用し、
 《いずれにしろ、おおよそ100人に1人くらいの割合でサイコパスがいると言えます。日本の人口(約1億2700万人)のうち、約120万人はいる計算になります。
 サイコパスは私たちの周囲に紛れ込んでおり、今日もあなたや、あなたの同僚や友人、家族を巻き込んでいるのです。
 あるいは、この本を今読んでいるあなた自身が、サイコパスかもしれません。》
と、序文の「はじめに」で記しています。

 中野信子氏は、かって「MENSA」(人口上位2%の知能指数を有する者が入れる団体)のメンバーでした。
 《・・・そこにはさまざまな現象について法則を見出すことが好きな人たちが集まっていて、パズルやゲームの攻略法を探し出したり、社会を見渡し、あるいは実験を通じて「こうなのではないか」「実はこういうことが言えるのではないか」という法則を考えたり、「みんなが常識だと思っている道徳や『決まり』は、実は最近になって作られた、誰かにとって都合のいいパラダイムだ」ということを見つける》・・・ことを、ゲームのように楽しんでいたそうです。

 ゲームも社会生活も約束事に守られてこそのはずですが・・・

 《・・・隠されたゲームのルールや社会の秩序を見つけたとき、それを悪用しようとする人もいます。抜け穴を使って他者を出し抜いたり、ひとりだけ規則に従わずに済ませたり、面従腹背していいとこ取りをするような行為です。これを指して、ネットスラング由来の言葉で「ルールハック」と呼ぶことがあります。
 普通の人はそういう反道徳的な行為をしません。しかしサイコパスはルールハックを気にせずにやってのける。
 これはとても不思議なことです。彼らにはなぜブレーキがかからないのか?
 また、100人に約1人の割合で存在しているということは、人類進化の過程で、サイコパスは今日まで淘汰されることなく生き残ってこられたということでもあります。
サイコパスの生き方(生存戦略)は、普通の人からすればとんでもないものに見えますが、生存戦略としては意外と有効なのかもしれません。》


◇「勝ち組サイコパス」と「負け組サイコパス」
  「第2章 サイコパスの脳」の、「2」「勝ち組サイコパス」と「負け組サイコパス」に、15ページにわたって論じられている内容が、ある意味、この本のメインイベントとしてアナウンスされる舞台かも知れませんが、あえて割愛とさせていただきました。

 私が知りたかったのは、サイコパスと言われる人たちが、通常の人たちと価値観を共有して同じ約束事のもとに生活できるのかどうかでした。そのことを、中野信子氏の著書から読み解きたいと思いました。
 ということで、「サイコパスの脳」の箇所を転書して、「サイコパスを知る」こととしました。


《◇87㌻~91㌻
 人間の脳の認知機能をつかさどる部分には、大きく分けて「大脳辺縁系を中心とした情動を司る部位の機能」と、「前頭前皮質を中心とした思考を司る部位の機能」の2つがあります。
 まずは、能科学の観点から、「サイコパス」の脳の働きを探ってみましょう。

①恐怖を感じにくい脳――扁桃体の活動が低い
 扁桃体を手術で取り除いてしまうと、うなり声や悲鳴、怒りの声
のような否定的なサインが理解できなくなることが知られています。食べられないものでも手当たり次第に口に運んだり、あらゆるものに対して発情し交尾をしかけたり、以前は恐れていた動物やヘビなどに平気で近づくようになります(クリューバー・ビューシー症候群と呼ばれています)。 
 つまり「サイコパスは扁桃体の活動が低い」ということは、恐怖や不安など、動物が本来持っている基本的な情動の動きが弱い、ということです。
 扁桃体の働きの一つとして、外界からのさまざまな感覚情報(刺激)が伝わる速度は、社会性や理性を司る前頭葉への伝達速度に比べ、扁桃体へは2倍の速さで到達します。考えるより先に、いわば本能的に反応する部分、と思ってもらっていいでしょう。

②「VMPFC」の異常――痛々しい画像を見ても反応しない:
 前頭前皮質については、VMPFC(内側前頭前皮質)ないしはVPFC(前頭前皮質腹内側部)が、一般人とサイコパスでは大きく異なってることも知られています。
 VMPFCが正常に機能していない人は、肉体的な変化が起こらないことです。脳の反応がないから、汗もかきませんし、皮膚の導電率の変化も起こりません。
 ゆえに、道徳的な文脈で「こういうことはしてはいけない」といくら言っても、サイコパスの心には響かない。将来的に自分が社会から大きな罰を受けることを、痛みをともなって想像することができない。
 だから「痛みを回避する」という学習様式を取ることもできないわけです。

③海馬と後帯状回の機能障害――情動記憶についての欠陥
 扁桃体や前頭前皮質以外にも、サイコパスの脳の特徴は報告されています。
 たとえばサイコパスの脳の学習能力に関しては、複数の調査が「海馬」の機能低下とサイコパスである傾向の高さの関連を指摘しています。
 海馬とは、情動を司る大脳辺縁系の一部です(扁桃体と近い場所にあります)。海馬は学習や記憶、空間の把握に重要な役割を果たしており、恐怖条件付けにも関わります。何をすべきか、何をすべきでないかを学ぶうえで重要な場所が、海馬だといえます。
 サイコパスは情動障害を持ち、怖れを感じない存在であることを今まで見てきましたから、「サイコパスは海馬に機能低下がみられる」という点について、違和感はないのではないかと思います。
 海馬機能が低下すると、状況判断の誤認をもたらし、攻撃的な行動のコントロールを失わせます。》


《◇70㌻. 80㌻
 能科学の観点から、「サイコパス」の脳の働きを探る。
①「熱い共感」を持たない脳:「サイコパス」は道徳によって判断することはありません。「合理的なのだから、それが正しい」と考えます。》


《◇82㌻
 「サイコパス」は、次に示すいずれかの理由、あるいはそれが複合することで、恐怖や罰から社会的な文脈を学習して痛みや罪、恥の意識を覚えることができません。
①扁桃体の活動が低い
②眼窩前頭皮質や内側前頭皮質の活動が低い
③扁桃体と眼窩前頭皮質や内側前頭皮質の結びつきが弱い

 (一方、サイコパスとは逆に、前頭前皮質と扁桃体の結びつきが強すぎる人もなかにはいます。このような人は、社会不安障害(対人恐怖など)やパニック障害、うつなどに罹患しやすいこともわかっています。)》

 
《◇107㌻
 「サイコパス」を対象にした脳画像の研究から、示唆されたのは次の4つのことです。
①脳梁の拡大
②海馬後部の体積減少
③海馬前部の非対称(左側より右側のほうが著しく大きい)
④前頭前皮質の灰白質の容積減少
 (このうち、③と④は、「成功していない」(負け組)サイコパスに見られるもので、「成功した」(勝ち組)サイコパスには認められていません。》


《◇216㌻
  「心理療法」は、大きく分けて次の3種類に分類できます。
①精神分析的心理療法
②人間学的心理療法(〈※〉)
③認知行動療法

〈※〉人間学的心理療法とは、人間性心理学(自己実現など肯定的価値観を主体とする心理学)をベースにしたもので、アメリカの臨床心理学者カール・ロジャースが提唱したパーソンセンタード・セラピー(来訪者中心療法)、ドイツの精神医学者フレデリック・パールズによるゲシュタルト療法などがあります。)

 認知行動療法は、ものの受け取り方や考え方(認知)に働きかけ、その帰結としての人間のふるまい(行動)を変化させていくという心理療法です。
 ただし、認知行動療法を含む心理療法は、前提として患者が「何を不安に思い、苦しんでいるのか?」が出発点になります。サイコパスにはそもそも「不安」がありません。出発点がないのです。しかも彼らは行動を改めることを拒みます。サイコパスは裁判所をはじめ、刑期を左右する人間に取り入れるためだけに(悔悛していることを装うために)、治療プログラムに参加するのです。》

追補です。(「認知行動療法」をとって治療しているあなたへ・・・) 
 (サイコパスは〉
《◇150㌻
・脳の機能について、遺伝の影響は大きい。
・生育環境が引き金となって反社会性が高まる可能性がある。
◇221㌻
・このように、サイコパスの治療は、そう簡単にはいきません。場合によっては、"治療後”のほうが再犯率は上がってしまいます。近所の精神科に通うレベルではとうてい治すことは不可能なのです。》

 ということで、「サイコパス」という一端を知ることができたという本となりました。



 中野信子著『サイコパス』の中から、歴史上にその名を残している人物を一人描き出し、この章を終わります。


《◇革命家・独裁者としての勝ち組サイコパス

 ミシガン州オークランド大学工学部教授のバーバラ・オークレィの著署『悪の遺伝子』では、毛沢東もサイコパスだったのではないかという推察がなされています。
 幼少期の毛沢東は父親に向かって、「年長者なのだから年少者の自分より仕事をするべきだ」と主張したといいます。これは儒教社会の中国ではとんでもない非礼にあたります。「長幼の序」という価値観を否定した毛沢東は、生まれながらの権威の破壊者、革命家だったのかもしれません。
 そして彼は持ち前の弁舌の巧さで人々を魅了し、権力を獲得しました。毛沢東の名言の一端は、『毛沢東語録』にまとめられています。
 しかし、毛沢東の私生活は破綻していました。複数の愛人をもち、最初の妻やその息子が捨てられて零落し、精神疾患で苦しんでも、憐憫の情をまったく示さなかったそうです。
 家族を含めた他人の痛みがわからない人間でなければ大粛清(〈※〉)をおこなうことなど不可能だったでしょうし、文化大革命で貴重な歴史的遺産や芸術作品を破壊するなどということもできなかったでしょう。》

〈※〉:文革には共産党内部の権力闘争と、その大衆運動化という二重の性格があり、悲劇は拡大した。文革中の奪権闘争や武闘で約2000万人もの死者が出たともいう。
出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」
(それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。)










                 
        

それでもこの世は悪くなかった 佐藤愛子 文春新書 寂しいということ

2017/ 02/ 15
                 
 「はじめに」と「あとがき」の、佐藤愛子氏の人生を写した言葉ことば一つひとつが身に沁みこんできます。
 本文全体を通して、思わず笑ってしまうあのときこのときのことが書かれています。その中で、何カ所かで氏は「寂しい」という言葉を綴っています。
 世にいう、変人、奇人と言われていた、遠藤周作、北杜夫、川上宗薫、色川武夫、中山あい子の諸氏は、氏の数少ない友だちでもありましたが、皆さん既に物故しています。


 亥年のお生まれというと、今年で満94歳の誕生日(1923年〈大正12年〉11月5日or25日生)を迎えることになります。
 文壇ではいつの間にか、瀬戸内晴美(寂聴)さん〈1922年(大正11年)5月15日-〉一人が私の前にいるだけになっていると氏はつぶやいています。その文章の流れの中で、共通の話題を持てる人がいなくなったのは寂しいですが、価値観を共有できないのも寂しいですね。と綴っています。
 寂しいとひとくちに括っても、何に対して寂しいのか、いろいろあるのですね。

 いまの寂しさは何の寂しさですかと問うたら、あなたは何とこたえますか。

 氏が一番長いお付き合いになる北杜夫と初めて会ったのが、25歳くらいの頃だったそうです。

 いつだったか、
「この頃どうなの? 躁のほうは」
と聞いたら、「もう、そんなエネルギーはなくなったよゥ」
と言ってました。エネルギーの過剰な人がヘンな人になるとしたら、あの頃の北さんはもうヘンな人ではなくなっていたのでしょうか。だとしたらおめでとうと言うべきだったかもしれないけれど、私は寂しかった。とても。

 と、その当時を振り返っています。

 氏の語りおろした寂しいこと、ちょっと長くなりますが端折ってはできませんので、そのまま載せます。

 今でも身の回りに起こったことで、これを分かち合いたいとか、一緒に笑いたいとか、思うようなことがあります。遠藤さんならさぞかし喜ぶ話とか、宗薫が喜ぶ話とか、中山さんが喜ぶ話とか、それぞれにあるのね。そんなときには、遠藤さんが、宗薫が、中山さんがいたらなあと思います。いま、この話をしたら喜ぶだろうというような友達は本当にみんないなくなった。それは、もう何とも言えないくらい寂しいですね。
 寂しいですよ。みんないなくなっちゃって。あの人たちがいなくなったってことは、あの時代はなくなった、再びこないってことですからね。それが寂しい。



 『それでもこの世は悪くなかった』は、寂しさを語りおろした本ではなかったですね。
 佐藤愛子氏は、周りから見れば、強い女、たくましい女、怒りっぽい女、元気な女と映ります。
 苦労して人生と戦ってきた結果が、周りからすればそう見えるだけとも、氏はどこかの本で語っていました。

 「あとがき」の最後の行を載せて、読後の感想と致します。

 何も苦しいことがなければ、幸福は生まれないのですよ。幸福を知るには苦労があってこそなんだというのは、苦労から逃げた人にはわからない真理だと思います。
 苦しいことだらけの人生を生きた私は、幸福な人生だったと思うんです。苦しい人生を力いっぱいに生きましたからね。


『それでもこの世は悪くなかった』 佐藤愛子
 2017年(平成29年)1月20日 第1刷発行 発行所株式会社文藝春秋 
 文春新書(780円+税)
それでもこの世は悪くなかった 佐藤愛子著 書きおろし




◇瀬戸内 寂聴(せとうち じゃくちょう、1922年(大正11年)5月15日 -.俗名晴美。僧位は大僧正. 2006年文化勲章受章)

◇遠藤周作(えんどう しゅうさく、1923年〈大正12年〉3月27日 - 1996年(平成8年)9月29 日.『白い人』第34回昭和30年上半期〈1955年〉芥川賞受賞.受賞時年齢32歳)

◇北杜夫(きた もりお、本名:斎藤 宗吉(さいとう そうきち)、1927年〈昭和2年〉5月1日 - 2011年〈平成23年〉10 月24日.『夜と霧の隅で』第43回昭和35年上半期〈1960年〉芥川賞受賞.受賞時年齢33歳)

◇川上宗薫(かわかみ そうくん、1924年〈大正13年〉4月23日 - 1985年〈昭和60年〉10月13日)

◇色川武夫(いろかわ たけひろ、1929年〈昭和4年〉3月28日 - 1989年〈平成1年〉4月10日.『離婚』第79回昭和53年上半期〈1978年〉直木賞受賞.受賞時年齢49歳)

◇中山あい子(なかやま あいこ、1923年〈大正12年〉1月9日 - 2000年〈平成12年〉5月1日)
 (〈※〉本文164ページに「・・・中山さんが亡くなってから知ったのが、ずっと私は彼女を一つ上だと思っていたのに、実際は二、三歳上だったということです。・・・」、「・・・最初にデビューした雑誌が生年月日を間違えて、訂正するのも面倒くさいから、そのままにしたって。・・・」というくだりがありますので、書き添えておきます。)

◇佐藤愛子(さとう あいこ、1923年〈大正12年〉11月5日-.『戦いすんで日が暮れて』:第79回昭和53年上半期〈1978年〉直木賞受賞.受賞時年齢45歳)














                 
        

週刊文春2月16日号 阿川佐和子の この人に会いたい 中野信子 サイコパス

2017/ 02/ 13
                 
  週刊文春 2月16日号の「阿川佐和子の この人に会いたい」を読みました。今回の登場者は脳科学者の中野信子氏です。
 氏による「サイコパス」(〈※〉)の脳科学的な解釈だと「理性と、いわゆる人間らしい感情の部分のバランスが普通の人とは違う人」となるそうです。だから必ずしも頭がいいわけではないとのこと。

〈※〉文春新書・780円+税


 「この人はいまこういう思いをしてるんだろうな」という共感力が発揮されるのは、目のくぼみのところ、そのちょっと上にある眼窩(がんか)前頭皮質という脳の部分の働きによるもので、サイコパスはその機能が低く他人の気持ちを慮(おもんぱか)れないという特徴を持っていると、氏はおっしゃっています。


 ◇遅いシステムと速いシステム

 人間は遅いシステムと速いシステムの二つのシステムを持っていて、大衆はテレビを観るとき、遅いシステムを使わない。(例えば、目の前にある美味しいものを食べ続けるとすぐ太ってしまうと、遅いシステムは考える。一方の速いシステムは強力で、多くの場合、今この食欲を満たしたいという意思決定が勝ってしまう。)

 (テレビに良く出ている人物を例にとってもなるほどと思いますが)
 その場限りですごくいい顔をすることができるのがサイコパスの一つの特徴で、その後の辻褄が合わないことが出てきても、それはそれこれはこれとして一向に意に介さないのだそうです。
 そもそもテレビの視聴者は、一貫性があるかどうかを全く気にしていない。だからテレビの世界はサイコパシーの強い人の方が生き残る可能性は高まるのではとも、氏は阿川佐和子さんに語っています。

 アメリカでトランプ大統領が誕生したのもこのシステムが関係していると思っているのが中野信子氏。
 速い意思決定のシステムが、優先するということの直近のこととしては、トランプは大衆の心を摑む才能を持っているので、私は「トランプが勝つと思います」とずっとテレビで言ってきた中野さんです。続けて氏の話を伺ってみることに致します。
遅いシステム(かくあるべきだという、先を見通したロジック)がマヒする条件が幾つかあって、寝不足とか体調が悪い時もそうですし、あとは群衆になった場合です。みんなが食べているからいいじゃないかとなる。民主主義は今ある制度の中ではいいものといえるでしょうけれども、速いシステムになりがちという落とし穴を知らなければなりません。

 (阿川さんが、)
 何かを決める時に遅いシステムを使えないって、子どもみたいですね。小さい子はよく「これ買って」と言って、親は「待ちなさい」みたいにブレーキをかけるじゃないですか。
 と話を受けます。

 (中野さんが話を続けます。)
 おっしゃるとおり、子供の脳は抑える機能が育っていないんです。ではどれくらいで育つかというと昔は25歳くらいというのが研究者の間でのコンセンサスだったのですが、今は30歳くらいと言われてまして。

 (阿川さん)
遅くなってるの?

 (中野さん)
我慢させる、忍耐力をつけるトレーニングは豊かな環境ではやりにくいんですよ。・・・

という話が続きます。

 (この話の中で中野氏は、)
 「豊かな環境だと、速いシステムを使って生きているほうが子供を残しやすいこと」、「貧しい環境で生き延びていくには遅いシステムを使った方が有効」という推測が成り立つと、南米のアマゾンに住んでいる民族と、南アフリカのカラハリ砂漠に住んでいる民族との生活環境の両者の違いからくる事実の結果を説明して、その違いを浮き彫りにしていました。




 ◇アルツハイマー型認知症の解決法

 アルツハイマー型認知症は脳が委縮して起こる現象です。
 神経細胞の周りにタンパク質繊維が溜まってることがひとつの原因だと分かっているのですが、
 脳が委縮しないというという魔法のように一気に解決する薬はまだ開発されていないそうです。
 今のところ言えるのは、認知症になりにくい人の習慣が三つあるそうです。
 その一つは、コミュニケーションをよくとること。脳で新生された細胞をより生き延びさせることに寄与するだろうと考えられている。
 もう一つは、歩くこと。脳にちゃんと血液を送る効果がある。
 あとの一つは、動物性脂肪を摂る頻度が少ないこと。


 
 他にもいろいろ興味深いことが多々書かれています。
 買い求めやすい新書版となっています。図書館で借りて読むのでもいいのかなとも思います・・・。

中野信子 サイコパス







                 
        

おやすみ、ロジャー 魔法のぐっすり絵本   山怪 弐 山人が語る不思議な話  

2017/ 02/ 07
                 
  先日、8冊の本を買いに書店に行きました。
 

 『山怪 弐 山人が語る不思議な話』など、合わせ8冊を書店に買いに行ったのですが、手にできたのが、この本と、『おやすみ、ロジャー 魔法のぐっすり絵本』の2冊だけでした。他の6冊は注文手続きをしましたが、入荷のご案内はまだ届いていません。。


 ◇『おやすみ、ロジャー 魔法のぐっすり絵本』

 『おやすみ、ロジャー 魔法のぐっすり絵本』は、たちまちのうちに70万部突破!だそうです。

おやすみ、ロジャー

 お子様を寝かせつけるための本だと思っていますので、家人が「買ってきて!」とリクエストした意味を図りかねています。
 帯カバー(表)には、「心理学的効果」により読むだけでお子さんが眠る絵本です。と書かれています。
 帯カバーの裏面「日本中のママ・パパから感謝の声続々!」と書いてある3人の保護者の方の声をお届けしましょう。

 ☆半信半疑で購入しましたが、本当に10分以内で寝て驚きました。
  (7歳男児の父、34歳会社員)

 ☆だいたい、「あくびおじさんの家」に着く前の、「おねむのカタツムリ」のあたりで眠ってしまいます。今までの苦労がウソのように、寝かしつけの時間がスムーズになりました。
  (4歳女児の母、37歳主婦)

 ☆寝る前の絵本は今まで3冊くらい読んでいたのですが、今はロジャーだけになりました。
  (3歳女児・1歳女児の母、26歳主婦)





 ◇『山怪 弐 山人が語る不思議な話』  

 著者田中康弘氏は、1959年長崎県に生まれています。
 フリーランスカメラマンとして、礼文島から西表島までの日本全国を放浪取材しています。
 『山怪 山人が語る不思議な話』の初版は、2015年6月16日に発行されています。マタギなど猟師たちから聞かされた不思議な話や奇妙な体験談の数々を載せています。猟師たちの見たまま、感じたままを53項目に分けて記述しています。

 『山怪 山人が語る不思議な話 弐』の初版が、2017年2月7日発行されました。(1週間ほど前に購入) 

山怪 Ⅱ

 著者の後書きに、《・・・人知を超えた存在は少なからずあり、それを恐れ敬う行為は人として必要だと考えているからだ。世の中が進み、昔は普通だったことが迷信だと言われる。中には当然排除すべき迷信もあるが、そうでないものもあるのだ。そこを見極めるのは人それぞれの尺度である。当然個人差が大きい。・・・》と、述べています。
 
 「山怪 弐」は、次の通り三つの篇に分けています。
 Ⅰ 胸騒ぎの山 28項目(真夜中の行軍、狸もたまには騙す、駆け巡る笑い声など、)
 Ⅱ 彷徨える魂 26項目(峠に集うもの、座敷わらし、回峰行など、)
 Ⅲ 森の咆哮 24項目(行ってはいけない、森とみそぎ、悪狸など、)
 
 
  「山怪・壱」の登場した場面はマタギの里でもある東北地方がより多く記述されている一方で、「山怪・弐」はもっと日本を幅広く、中部、近畿、山陰、四国地方までを網羅しています。
 その、「壱」と「弐」を読んで感じたことの一つは、柳田國男の言う「蝸牛」現象でした。北に、西に、同様の言い伝えや現象がドーナツ型に広がっているのが判ります。
 もう一つ興味深く思ったことは、北では狐の話が良く出てくるのに、狸の話は出てこないのですが、西は真逆で、狸の話が多いのに、狐の話はとんと出てこないのです。

 ジビエ料理を食べることができるお店もあちこちにあることを知りました。滋賀の大津市にもあったんです。もっと早く知っていたら、1月の近江・京に出向いた時にきっと暖簾をくぐっていたことでしょう。
 信州松本在の蕎麦屋ご主人の話も載っていました。今度信濃路を訪ねた折には、立ち寄ってみたいなとも思いながら読んでいました。