セミ 蝉 せみ  

2017/ 08/ 06
                 
 ある年の晩春のゴルフ場です。
 ウグイスの声の合間に、セミの鳴き声が耳に入ってきます。
 その声の主は、ハルゼミです。

 このところ、とんとハルゼミの声を聞かなくなりました。

 私が住んでいたところは、群馬県、長野県、東京都、神奈川県、愛知県、そして埼玉県です。
 ゴルフはこのところ、栃木県が多くなっています。
 それらのところで目にしたり耳にしたりしたセミの種類を、早く鳴く順に並べてみますと、

 ・ハルゼミ
 ・ヒメハルゼミ
 ・ニイニイゼミ
 ・エゾゼミ
 ・クマゼミ 
 ・ヒグラシ
 ・ツクツクボウシ
 ・チッチゼミ

 となっています。
 勿論、声はすれども姿は見えずといった塩梅が多く、その鳴き声で、中て推量した分も含んだセミの種類です。


 セミは俳句によく詠まれています。あの松尾芭蕉の句は誰でも諳んじている通りです。
 セミは夏の季語となっていますが、法師蝉(ツクツクボウシ)だけは、秋の季語となっています。

一方、詩のジャンルでは、「セミ」そのものをタイトルとしたものはあまりお見受けしません。
 私が群馬県に住んでいた頃、山村暮鳥の、

 《 ある時
   また蜩(ひぐらし)のなく頃となった
   かな かな
   かな かな
   どこかに
   いい国があるんだ 》

という詩の一節に出会い、不思議な感覚に満たされたことがありますが、それは「雲 より」というタイトルの35行で成り立っている詩の中の数行であらわしているもので、蜩がタイトルとはなっていませんでした。


夏です。
蝉の声が耳に入ってきます。
詩で表現する蝉は、どんな蝉となるのか。

工藤直子と、金子みすゞの詩です。
  



       せみのなつ

               せみ すすむ

いろんな せみが
せっせと なくぞ
ワシワシワシワシ      
ちょっと一息*Cafe Time*
わしらの なつだ
ミーン ミンミン
みんな でてこい
ツクツク ボーシ
ぼうしをかぶって
まるまるいちにち
うたってあそべば
カナカナカナカナ
もうひぐれ・かな?

 ―工藤直子―




  蝉のおべべ

母さま
裏の木のかげに、
蝉のおべべが
ありました。

蝉も暑くて
脱いだのよ。
脱いで、忘れていったのよ。

晩になったら
さむかろに、
どこへ届けて
やりましょか

 ―金子みすゞ―

 

               
  雲 より

 ふるさと
淙々(そうそう)として
天(あま)の川が流れてゐる
すっかり秋だ
とほく
とほく
豆粒のやうなふるさとだのう

 ある時
また蜩(ひぐらし)のなく頃となった
かな かな
かな かな
どこかに
いい国があるんだ

 赤い林檎
 おなじく
こどもはいふ
赤い林檎のゆめをみたと
いいゆめをみたもんだな
ほんとにいい
いつまでも
わすれないがいいよ
大人(おとな)になってしまへば
もう二どと
そんないい夢は見られないんだ

 雲
丘の上で
としよりと
こどもと
うっとりと雲をながめてゐる

 おなじく
おうい雲よ
ゆうゆうと
馬鹿にのんきさうぢゃないか
どこまでゆくんだ
ずっと磐城平(いはきだひら)の方までゆくんか


  ―山村暮鳥―