春の詩 中也

2015/ 03/ 10
                 
 中原中也 『吹く風を心の友と』
   《「日本の詩集10 中原中也詩集〈未刊詩篇〉昭和43年2月10日初版発行 発行所角川書店》 


 
吹く風を心の友と
口笛に心まぎらはし
私がげんげ田を歩いてゐた十五の春は
煙のやうに、野羊(やぎ)のやうに、パルプのように、

とんで行って、もう今頃は、
どこか遠い別の世界で花咲いてゐるであらうか
耳を澄(す)ますと
げんげの色のやうにはぢらひながら遠く聞こえる

あれは、十五の春の遠い音信なのだらうか
滲(にじ)むやうに、日が暮れても空のどこかに
あの日の昼のまゝに
あの時が、あの時の物音が経過しつつあるやうに思はれる

それが何処か?――とにかく僕に其処にゆけたらなあ……
心一杯に懺悔(ざんげ)して、
恕(ゆる)されたといふ気持の中に、再び生きて、
僕は努力家になろうと思ふんだ――




111パンジーハウス20150310
 〈パンジーハウス2015年3月10日撮影〉


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