五月の詩

2015/ 05/ 11
                 
 うんざりするでしようけれども、おつきあいください。
 谷川俊太郎(東京都杉並区1931年12月15日-)の「5月の詩」から今度は題を、「五月の詩」とした詩の数々です。
 谷川俊太郎も含めた、ここにあげた6名の詩作家は、一人ひとりを辿っていくとお互いが関連して今日にその足跡を記していますが、話の本筋から外れますので、ここでは述べません。

 
 寺山修司(青森県弘前市1935年12月10日-東京都杉並区1983年5月4日)。
 三木露風(兵庫県たつの市1889年6月23日-東京都三鷹市1964年12月29日)
 室生犀星(石川県金沢市1889年8月1日-東京都大田区1962年3月26日)
 萩原朔太郎(群馬県前橋市1886年11月1日-東京都世田谷区1942年5月11日)
 山村暮鳥(群馬県高崎市1884年1月10日-茨城県大洗町1924年12月8日)


  《萩原朔太郎没後73年となる5月11日をはさんで、朔太郎生誕地で様々な催しが開かれています。》



寺山修司 「五月の詩・序詞」-詩集『われに五月を』より-

   きらめく季節に
   たれがあの帆を歌ったか
   つかのまの僕に
   過ぎてゆく時よ

  夏休みよさようなら
  僕の少年よ さようなら
  ひとりの空ではひとつの季節だけが必要だったのだ 重たい本 すこし
  雲雀の血のにじんだそれらの歳月たち

  萌ゆる雑木は僕のなかにむせんだ 
  僕は知る 風のひかりのなかで
  僕はもう花ばなを歌わないだろう
  僕はもう小鳥やランプを歌わないだろう
  春の水を祖国とよんで 旅立った友らのことを
  そうして僕が知らない僕の新しい血について
  僕は林で考えるだろう
  木苺よ 寮よ 傷をもたない僕の青春よ
  さようなら

   きらめく季節に
   たれがあの帆を歌ったか
   つかのまの僕に
   過ぎてゆく時よ

  二十才 僕は五月に誕生した
  僕は木の葉をふみ若い樹木たちをよんでみる
  いまこそ時 僕は僕の季節の入り口で
  はにかみながら鳥達たちへ
  手をあげてみる
  二十才 僕は五月に誕生した



三木露風 「去りゆく五月の詩」-日本詩人全集〈三木露風〉より-  

われは見る。
廃園の奥、
折ふしの音なき花の散りかひ。
風のあゆみ、
静かなる午後の光に、
去りゆく優しき五月のうしろかげを。

空の色やはらかに青みわたり
夢深き樹には啼〔な〕く、空〔むな〕しき鳥。

あゝいま、園〔その〕のうち
「追憶」〔おもひで〕は頭〔かうべ〕を垂れ、
かくてまたひそやかに涙すれども
かの「時」こそは
哀しきにほひのあとを過ぎて
甘きこころをゆすりゆすり
はやもわが楽しき住家〔すみか〕の
屋〔をく〕を出〔い〕でゆく。

去りてゆく五月。
われは見る、汝〔いまし〕のうしろかげを。
地を匍〔は〕へるちひさき虫のひかり。
うち群〔む〕るゝ蜜蜂のものうき唄
その光り、その唄の黄金色〔こがねいろ〕なし
日に咽〔むせ〕び夢みるなか……
あゝ、そが中に、去りゆく
美しき五月よ。

またもわが廃園の奥、
苔古〔ふ〕れる池水〔いけみず〕の上、
その上に散り落つる鬱紺〔うこん〕の花、
わびしげに鬱紺の花、沈黙の層をつくり
日にうかびたゞよふほとり――

色青くきらめける蜻蛉〔せいれい〕ひとつ、
その瞳、ひたとたゞひたと瞻視〔みつ〕む。

ああ去りゆく五月よ、
われは見る汝のうしろかげを。

今ははや色青き蜻蛉の瞳。
鬱紺の花。
「時」はゆく、真昼の水辺〔すゐへん〕よりして――



室生犀星 「五月」-日本詩人全集<室生犀星>より-
           
  悲しめるもののために
  みどりかがやく
  くるしみ生きむとするもののために
  ああ みどりは輝く



萩原朔太郎 「五月の貴公子」-日本詩人全集〈萩原朔太郎「月に吠える」〉より-

若草の上をあるいてゐるとき、
わたしの靴は白い足あとをのこしてゆく、
ほそいすてつきの銀が草でみがかれ、
まるめてぬいだ手ぶくろが宙でおどつて居る、
ああすつぱりといつさいの憂愁をなげだして、
わたしは柔和の羊になりたい、
しつとりとした貴女(あなた)のくびに手をかけて、
あたらしいあやめおしろいのにほひをかいで居たい、
若くさの上をあるいてゐるとき、
わたしは五月の貴公子である。



山村暮鳥 「五月の詩」

 やはらかくして幅広き日光を吸ふ

 から始まる、暮鳥の「五月の詩」をご存知の方がいらっしゃいましたら教えてください。

 初稿本『三人の処女』(未刊)
 「汝の声より」の後に続く
 「黄」中の五つ目に「五月の詩」が載っています。
  ・生物
  ・黄
  ・雪の翌日
  ・五月の詩
  ・微風
  ・黄い月
  ・落日と雲雀
  ・彼方より
  ・午睡
  ・猫
  ・記憶
  ・三味線と雨と蟋蟀
  ・夏の歌
            

 
 茨城のり子(大阪府大阪市〈西尾市育ち〉1926年6月12日-東京都西東京市2006年2月17日)は、谷川俊太郎との交流も深いので、彼女の「5月の詩」と題した詩もあるのかなと思ったのですが、みつかりません。


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