虫の口焼き

2016/ 02/ 03
                 
 補修 習俗歳時記    四  年越し


 私共の村でも一般には年越しをするのですが、私の一族だけは大晦日に年越しをするのです。一族の言い伝えには遠い先祖がその主君と戦死したのは一月の二十一日であった由で、その子供達節分に豆撒きが出来ず大晦日にする家例となったというのです。多くの家例の理由は大体この程度のあまり信ぜられない原因によるのですが、それが永世を支配する力は強いものがあります。大晦日の豆撒きは何か他の民俗的原因によるものと思いますが節分より実際の年越しと一致するのでその実感はよくいたします。

 年の暮の忙しい一日が終りますと、年男は湯に入って体を清め、神仏にあげる火をきります。その同じ火がいろりの下の「豆木」にうつされます。豆木というのは大豆の実を落した、豆殻のついたままの根こそぎにした木です。実によく燃えます。真黒な焙烙(ホウロク)が、鉤竹にかかっていて豆はこの豆木の火でいられるのです。この時は一年の重荷をおろした顔々が囲炉裏の側にならんで豆のいられるのを待ちます。炉の焚き火のはしに鰯を、頭と尾の二部分に銅切りされたものが、昔は柊の二又の枝にさされ、今では豆木そのものの二叉にさされて炙(あぶ)られています。鰯が少しく焦げてくると、豆木ごと灰から抜き取られて炉のまわりの人々に順次に手渡されます。これを持つ人は、口の中で農作物を害する虫に対する呪文をとなえて、唾をこの鰯にはきかけ、炉の火にあぶって又次の人に廻すのです。

①年越 虫の口やき
 〈虫の口やき〉


 この虫の口焼きは、
 「稲の虫の口を焼き申す。ぺッぺッ。」
 「茄子、胡瓜、稲、麦、小麦、小豆、大豆、其の他四十八色の虫の口を焼き申す。ペッ、ペッ。」などと沢山一度に唱える事もあります。この鰯はよくやかれた後、家のトボロの上に一年中かざられて居ります。勿論害悪除けでありましょう。

③年越 ④年越
 〈ヤカガシ(※) と豆煎り〉  〈虫の口焼き(大晦日)〉
 (※=柊鰯の別称.北関東で「ヤカガシ」といういい方に、初めてお目にかかりました!)

 いり上った豆は一升桝に入れられて年神様に供えられます。次にこの桝を下して年男を先頭に豆撒きが始まります。
 「福は内、鬼は外、福は内」が普通の呼び声です。神棚の前だけ更に「鬼は外、福は内」をつけ加えます。各部屋、部屋、土蔵、便所、馬屋、門、納屋、稲荷様等順に撒き廻るのであります。晴れた空に三つ星様が中天にかかっていたり、うす曇って大きな月の暈が真上の空に望まれたりするのもこの豆撒きの晩であります。

②年越
 〈豆まき〉


 豆は撒き終ると一度神棚に供えられて更に豆茶にいれて飲んだり、粒のまま新しい年令の数だけたべたりして新年を待つのです。この豆は「鬼の豆」と云って少し許り別に瓶に入れて神棚の端に一年中とって置かれます。よく村のむずかしい問題や、其の他心配事のある場合、ネクタイなどしめながら父が「鬼の豆」をと云って母にとりよさせて三粒ほどを食べてゆくのもこの豆でした。この豆は洋服の中身をこの位今も支配して居るのでした。

 豆撒きが終るといろりには梅さんが大きな根っ子を燻べて年の火の支度をします。これが明日の元旦まで炉の中でゆっくり燃えていて、けむいけれども暖かい朝をむかえさせてくれるのでした。


⑫ 鰯を柊の二枝に頭と身に分けて
 〈鰯の頭と身を柊の二枝にさしました。〉



〈柊鰯(ひいらぎいわし)〉
⑯柊鰯


 《 『柊鰯は、節分に魔除けとして使われる、柊の小枝と焼いた鰯の頭、あるいはそれを門口に挿したもの。西日本では、やいかがし(焼嗅)、やっかがし、やいくさし、やきさし、ともいう。』
 ◇柊の葉の棘が鬼の目を刺すので門口から鬼が入れず、また塩鰯を焼く臭気と煙で鬼が近寄らないと言う(逆に、鰯の臭いで鬼を誘い、柊の葉の棘が鬼の目をさすとも説明される)。日本各地に広く見られる。
 ◇歴史と変移:平安時代には、正月の門口に飾った注連縄(しめなわ)に、柊の枝と「なよし」(ボラ)の頭を刺していたことが、土佐日記から確認できる。現在でも、伊勢神宮で正月に売っている注連縄には、柊の小枝が挿してある。江戸時代にもこの風習は普及していたらしく、浮世絵や、黄表紙などに現れている。西日本一円では節分にいわしを食べる「節分いわし」の習慣が広く残る。奈良県奈良市内では、多くの家々が柊鰯の風習を今でも受け継いでいて、ごく普通に柊鰯が見られる。福島県から関東一円にかけても、今でもこの風習が見られる。東京近郊では、柊と鰯の頭にさらに豆柄(まめがら。種子を取り去った大豆の枝。)が加わる。
 また、奈良県吉野町では、一本だたらを防ぐため節分の日にトゲのある小枝に焼いたイワシの頭を刺して玄関に掲げるという。
 鬼を追いはらう臭いを立てるために、ニンニクやラッキョウを用いることもある。》~ウィキペディア~


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