今朝の雪 こぞの雪

2016/ 02/ 25
                 
 


 雪  三好達治

太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。



ムッチャンその1

 

 雪が降ってゐる  中原中也

雪が降ってゐる、
  とほくを。
雪が降ってゐる
  とほくを。
捨てられた羊かなんぞのやうに
  とほくを。
雪が降ってゐる、
  とほくを。
たかい空から、
  とほくを、
とほくを
  とほくを
お寺の屋根にも、
  それから、
お寺の森にも、
  それから、
たえまなしに、
  空から
雪が降ってゐる
  それから、
兵営にゆく道にも、
  それから、
日が暮れかゝる、
  それから、
喇叭(ラッパ)がきこえる。
  それから、
雪が降ってゐる、
  なほも。     (1929・2・18)



ムッチャンその2



 生(お)ひ立ちの歌  中原中也

  Ⅰ

   幼年期
私(わたし)の上に降る雪は
真綿(まわた)のやうでありました。

   少年期
私の上に降る雪は
霙(みぞれ)のやうでありました

   十七 - 十九
私の上に降る雪は
霰(あられ)のやうに散りました

   二十 - 二十二
私の上に降る雪は
雹(ひよう)であるかと思はれた

   二十三
私の上に降る雪は
ひどい吹雪(ふぶき)とみえました

   二十四
私の上に降る雪は
いとしめやかになりました・・・・・・

 Ⅱ

私の上に降る雪は
花びらのやうに降ってきます
薪(たきぎ)の燃える音もして
凍(こほ)るみ空の黯(くろ)む頃

私の上に降る雪は
いとなよびかになつかしく
手を差伸べて降りました

私の上に降る雪は
熱い額(ひたひ)に落ちもくる
涙のやうでありました

私の上に降る雪に
いとねんごろに感謝して、神様に
長生(ながいき)したいと祈りました

私の上に降る雪は
いと貞潔でありました



ムッチャンその3



くらかけ山の雪  宮澤賢治

たよりになるのは
くらかけつづきの雪ばかり
野はらもはやしも
ぽしやぽしやしたり黝(くす)んだりして
すこしもあてにならないので
まことにあんな酵母(かうぼ)のふうの
朧〔おぼ〕ろなふぶきではありますが
ほのかなのぞみを送るのは
くらかけ山の雪ばかりです



ムッチャン⑨


❀出典 新潮社版 日本詩人全集 全34巻中、宮沢賢治=20、三好達治=21、中原中也=22による。



23  雀一羽



積もった雪  金子みすゞ  


上の雪
さむかろな。
つめたい月がさしてゐて。

下の雪
重かろな。
何百人ものせてゐて。

中の雪
さみしかろな。
空も地面(じべた)もみえないで。

❀出典 金子みすゞ「新装版 金子みすゞ全集Ⅰ・Ⅱ」JULA出版局



21 ムッチャン



ふきのとう  工藤直子


よが あけました。

あさの ひかりを あびて、

竹やぶの 竹の はっぱが、

「さむかったね。」

「うん、さむかったね。」

と ささやいて います。

雪が まだ すこし のこって、

あたりは しんと して います。


どこかで、小さな こえが しました。

「よいしょ、よいしょ。おもたいな。」

竹やぶの そばの ふきのとうです。

雪の 下に あたまを 出して、雪を どけようと、

ふんばって いる ところです。

「よいしょ、よいしょ。そとが 見たいな。」




「ごめんね。」

と、雪が 言いました。

「わたしも、早く とけて

 水に なり、とおくへ いって

 あそびたいけど。」

と、上を 見上げます。

「竹やぶの かげに なって、

 お日さまが あたらない。」

と ざんねんそうです。




「すまない。」

と、竹やぶが 言いました。

「わたしたちも、ゆれて おどりたい。

 ゆれて おどれば、雪に 日が あたる。」

と、上を 見上げます。

「でも、はるかぜが まだ こない。

 はるかぜが こないと、おどれない。」

と ざんねんそうです。




空の 上で、お日さまが わらいました。

「おや、はるかぜが ねぼうして いるな。

 竹やぶも 雪も ふきのとうも、みんな

 こまって いるな。」

そこで、南を むいて 言いました。

「おうい、はるかぜ。おきなさい。」




お日さまに おこされて、

はるかぜは、大きな あくび。

それから、せのびして 言いました。

「や、お日さま。や、みんな。おまちどお。」

はるかぜは、むね いっぱいに いきを すい、

ふうっと いきを はきました。

     

はるかぜに ふかれて、

竹やぶが、ゆれる ゆれる、おどる。

雪が、とける とける、水に なる。

ふきのとうが、ふんばる、せが のびる。

ふかれて、

ゆれて、

とけて、

ふんばって、

  もっこり。

ふきのとうが、かおを

出しました。

「こんにちは。」




もう、

すっかり はるです。


❀出典 光村図書「こくご 二上 たんぽぽ」/平成25年2月5日発行より


24 二羽のメジロ




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