東北沢物語 -食べ物・飲み物-

2016/ 04/ 24
                 
 「ご立派なお父様ですね」。
 ただいま。といってすぐ、(このときだけだと思いましたが)奥様が玄関口に出てきました。そして開口一番がこの言葉でした。

 何かなと思ったら、父が田舎の家の庭でたわわに実ったボタンキョウ(牡丹杏、巴旦杏〈ハタンキョウ〉、李〈スモモ〉)を届けに来たとのことです。

 父が新橋駅にほど近い東京電力の本店にいたときよりも、もっと後のことだったと思います。何かの折にボタンキョウが好きだった息子のために、わざわざ家の庭の枝から狩り取って持ってきてくれたのです。
 
 日ごろの私とは雲泥の差アリアリの、父の容姿と振る舞いに、下宿先の奥様はいたく感銘を受けたようです。


 小田急線東北沢駅からほど近く、京王線笹塚駅にも歩いて行ける、Kさんのお宅は、2階二間を学生に貸していました。十畳と六畳です。私は新参者で、空いていた東南の小さい方の部屋に入りました。
 近くには可愛らしいスナック(ママとその妹さんがやっている)もありました。
 私がこの地の住人になってちょっと経ってからトンカツを専らとする食堂が店を構えました。

 この日もわが下宿に、書研仲間が押しかけていました。
 相も変わらずの女っ気のないグループです。
 くだんのT(今後は「TA」という言うことにします)、K(今後は「KB」と言うことにします)、そしてお酒をこよなく愛する背の高いK(今後は「KC」と言うことにします)など相変わらずの大人数でした。
 昼時になったということもあり、近くの食堂の出前を頼むことにしました。
 私は小さい頃からトンカツが大好物でしたので、皆にとんかつ定食でいいかどうかを確かめてから、このとんかつ屋に注文しに行きました。
 
 出来立てのとんかつ定食を持ってきた店主にひと言。「遅かったねえ・・・」とKC。
 みんな空きっ腹だったのでしょう。結構な人数分を作ったのですから、それなりのテマヒマがかかるとは思うのですが、飢えたる者どうしです。異口同音の声が出揃いました。
 あのとんかつ、結構ボリュームもあり美味かったのですが、それ以来お店の暖簾をくぐることはありませんでした。


 書研仲間と、新宿のビルの屋上にあるビヤガーデンなどに飲みに行きました。 学生などの連中も出入りする、KCが懇意にしている新宿(だったと思いますが、不確かです)のバーに入ったときは、彼はウイスキーをダブルで注文するのですが、下戸の私はシングルでかつ氷と水を入れてもらって恐る恐る口に運んだことなど思い出しています。
 あのときも、やはりあちらこちらの女性のことなども話題になりました。
 本人は自分のことは何もしゃべりませんでしたが、KCは背も高く相対比較の上でハンサムでもありましたので、他の連中からやっかみ半分の、彼のもて方振りを聞くことにもなりました。
 「ああ、そうなんだ・・・」と、私は黙って聞いていました。知っている人の名前なまえが、皆の間を飛び交っているからにほかなりません。


 

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