「空也を尋ねて」お仕舞い -8-

2016/ 07/ 19
                 


 「老舗の履歴書Ⅰ」(〈元黒門町の空也〉著者:樋口修吉.1999年5月25日初版発行.発行所:中央公論社)には、次のように記述されています。

《 夏目漱石の『吾輩は猫である』の舞台となる苦沙弥(くしゃみ)先生の家で、迷亭や寒月などの来客があったとき茶菓子として出されるのは空也(くうや)餅である。
 その空也餅を、正月に椎茸を食べて前歯を二本折った寒月が食べると、欠けた前歯のふちにくっつくところから、“空也餅引掛所”と表現されている。
 ・・・ 
 空也の和菓子を贔屓(ひいき)にした画家には安井曾太郎、橋本明治、杉山寧(やすし)などがいるし、昭和三十年前後に発表された小説には空也の和菓子がしばしば登場した。たとえば林芙美子の『匂ひ菫』には空也最中が茶菓子として、舟橋聖一の『白い魔魚』には空也が手土産として、小島政二郎の『金の指』には空也双紙が手土産として出てくる。・・・ 》

 この文中の表現の中で、《舟橋聖一の『白い魔魚』には空也が手土産として・・・》というくだりが書かれていますが、その小説の本文には、「空也」という文字はどこを探しても見当たりません。
 「銀座」という地名、「並木通り」という通りの名前が何回も出てきますので、「手土産の最中」は、並木通りにある「空也もなか」と結びついたものと理解しました。
 なお、林芙美子の小説『匂い菫』という「題」のことについて感じたことを。
 元々の文芸雑誌に出た時のタイトルは『匂ひ菫』であったかと推し量ることができますが、林芙美子の一冊の書籍となっている中の「短篇小説のタイトル」としては『『匂い菫』となっていることを付記しておきます。


 というような前置きが長くなりましたが、「空也を尋ねて」シリーズは、今回の「8」でお仕舞いとなります。
 「空也のことあれこれ」を書き始めてから、終章に辿り着くまで、あちこち寄り道をしましたが、これもわが心の中を表す旅の一つの形態なのかなと今は思います。

  4人の作家の4つの小説のどこに「空也」のことが書かれているのか、そのページをコピーしてここに載せました。


吾輩は猫である 空也餅  復刻版 ⑯
『新選 名著復刻全集 近代文学館』
「吾輩ハ猫デアル」夏目漱石著.(大倉書店・服部書店版/初版本復刻) 刊行:財団法人日本近代文学館
 〈外函入三冊揃い・上編:昭和49年5月1日発行 ・中編:昭和49年5月1日発行 ・下編:昭和49年5月1日発行〉


林芙美子 匂い菫 ④
「下町」林芙美子著.発行所:株式会社角川書店(角川文庫).昭和32年5月30日発行.


白い魔魚 舟橋聖一② -
「白い魔魚」舟橋聖一著.発行所:株式会社新潮社.昭和31年3月30日発行.


金の指 小島政二郎③
「金の指」小島政二郎著.発行所:株式会社光風社.昭和39年11月25日発行









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