とと姉ちゃん  ホットケーキ特集

2016/ 08/ 03
                 


 あの当時、とても頑丈そうでシンプルな冷蔵庫とオーブンが台所の一角を占めていました。
 冷蔵庫といっても「板氷」を台に入れて庫内を冷やすという類のものです。
 ということからすれば、オーブンも今の時代と比べようもないものでした。

 母が、沼田の街中までイースト菌を買い出しに出かけました。
 我が家の子どもたちに、手づくりのパンを食べさせるためです。
 村を通るバス便は、とても少なかった時代のことです。

 夕方、香ばしいパンを焼いた匂いが、家々を包み込んでいきます。
 ここは社宅だけで作られている小さな集落です。
 いつのまにか、近所の子どもたちが我が家の台所の入り口に集まっています。

 我が家の子ども三人のためのパン・・・でしたけれど、母は、ワイワイガヤガヤとおしゃべりして、出来上がりを一所懸命待っている子どもたちの人数を数えていました。
 
 焼きたてのパンの何ともいえない香りは今でも鮮明に覚えているのですが、このときのパンの味は覚えていないのです。

 それからまたしばらくして、母は我が家の子どもたちのために、パンをつくりました。
 今度も社宅の子どもたちが台所前にあっという間に集合しています。
 今度も母は、子どもたちの頭数をきちんと数えました。勿論、家の中にいた三人の子ども達も忘れていません。
 このときのパンの香ばしさと美味しさというものが、想坊の食いしん坊をハッキリと芽生えさせた瞬間でもありました。

 でもそれ以来、母はイースト菌を手に入れるために沼田の街まで出かけるということはありませんでした。
 母のつくったパンの味をかみしめたのは、生涯この一度だけとなりました。



 「とと姉ちゃん」の今週は、小麦料理特集「ホットケーキ」ですね。混ぜて焼くだけで作れる簡単料理・・・





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