宮沢賢治への旅 「第1部イーハトーブの光と風」&「第2部ほんとうの幸せを求めて」

2016/ 08/ 19
                 


  牧歌
    「種山ヶ原の夜」の歌(三)

一、種山ヶ原の 雲の中(なが)で刈った草は
  どごさが置いだが 忘れだ 雨(あめ)ぁふる

二、種山ヶ原の せ高の芒(すすぎ)あざみ
  刈ってで置ぎわすれで 雨(あめ)ぁふる 雨(あめ)ぁふる 

三、種山ヶ原の 霧の中(なが)で刈った草さ
  わすれ草も入(はえ)ったが 忘れだ 雨(あめ)ぁふる 

四、種山ヶ原の 置ぎわすれの草のたばは
  どごがの長嶺(ながね)で ぬれでる ぬれでる
   
五、種山ヶ原の 長嶺(ながね)さ置いだ草は
  雲に持ってがれで 無ぐなる 無ぐなる 

六、種山ヶ原の 長嶺の上の雲を
  ぼっかげで見れば 無ぐなる 無ぐなる   

宮沢賢治 牧歌 作詞作曲

 所収:日本詩人全集 20 宮沢賢治 
 昭和42年4月10日発行 
 著作者 宮沢賢治
 編 者 草野心平
 発行所 株式会社 新潮社





プレミアムカフェ 宮沢賢治への旅 第1部・第2部

 今朝(8月19日)9時からの、NHK BSプレミアム、「Pカフェ 生誕120年 宮沢賢治の世界」。
 あと10分ほどで10時になるあたりから、見始めました。
 「宮沢賢治への旅」の第1部は、「イーハトーブの光と風」、第2部は、「ほんとうの幸せを求めて」となっていました。
 
 公式サイトをみましたところ、初回放送は1996年となっていました。
 再放送は、8月20日(土)の午前2時から95分間ですので、録画にセットしました。
 



  永訣(えいけつ)の朝

けふのうちに
とほくへいってしまふわたくしのいもうとよ
みぞれがふっておもてはへんにあかるいのだ
 ( ※ あめゆじゅとてちてけんじゃ)
うすあかくいっそう陰惨(いんさん)な雲から
みぞれはびちょびちょふってくる
 (あめゆじゅとてちてけんじゃ)
青い蓴菜(じゅんさい)のもやうのついた
これらふたつのかけた陶椀(たうわん)に
おまへがたべるあめゆきをとらうとして
わたくしはまがったてっぱうだまのやうに
このくらいみぞれのなかに飛びだした
 (あめゆじゅとてちてけんじゃ)
蒼鉛(さうえん)いろの暗い雲から
みぞれはびちょびちょ沈んでくる
ああとし子
死ぬといふいまごろになって
わたくしをいっしゃうあかるくするために
こんなさっぱりした雪のひとわんを
おまへはわたくしにたのんだのだ
ありがたうわたくしのけなげないもうとよ
わたくしもまっすぐにすすんでいくから
 (あめゆじゅとてちてけんじゃ)
はげしいはげしい熱やあへぎのあひだから
おまへはわたくしにたのんだのだ
銀河や太陽 気圏などとよばれたせかいの
そらからおちた雪のさいごのひとわんを……
……ふたきれのみかげせきざいに
みぞれはさびしくたまってゐる
わたくしはそのうへにあぶなくたち
雪と水とのまっしろな二相系(にそうけい)をたもち
すきとほるつめたい雫(しづく)にみちた
このつややかな松のえだから
わたくしのやさしいいもうとの
さいごのたべものををもらっていかう
わたしたちがいっしょにそだってきたあひだ
みなれたちゃわんのこの藍(あい)のもやうにも
もうけふおまへはわかれてしまふ
( ※ Ora Ora de Shitori Egumo)
ほんたうにけふおまへはわかれてしまふ
あああのとざされた病室の
くらいびゃぶやかやのなかに
やさしくあをじろく燃えてゐる
わたくしのけなげないもうとよ
この雪はどこをえらばうにも
あんまりどこもまっしろなのだ
あんなおそろしいみだれたそらから
このうつくしい雪がきたのだ
 ( ※ うまれでくるたて 
こんどはこたにわりゃのごとばかりで 
くるしまなぁよにうまれでくる)
おまへがたべるこのふたわんのゆきに
わたくしはいまこころからいのる
どうかこれが兜卒(とそつ)の天の食に変って
やがておまへとみんなとに
聖(たふと)い資糧(しりやう)をもたらすことを
わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ

 原註
 ※ あめゆきをとってきてください
 ※ あたしはあたしでひとりいきます
 ※ こんなにじぶんのことばかりで くるしまないやうにうまれてきます 



 所収:日本詩人全集 20 宮沢賢治 
 昭和42年4月10日発行 
 著作者 宮沢賢治
 編 者 草野心平
 発行所 株式会社 新潮社






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