冬の詩 朔太郎

2013/ 12/ 03
                 
 冬  萩原朔太郎

つみとがのしるし天にあらはれ、
ふりつむ雪のうえにあらはれ、
木木の梢にかがやきいで、
ま冬をこえて光るがに、
おかせる罪のしるしよもに現はれぬ。
みよや眠れる、
くらき土壌にいきものは、
懺悔の家をぞ建てそめし。



冬の海の光を感ず  萩原朔太郎

遠くに冬の海の光をかんずる日だ。
きびしい大浪(おほなみ)の音(おと)をきいて心はなみだぐむ。
けふ沖の鳴門(なると)を過ぎてゆく舟の乗手はたれなるか
その乗手等の黒き腕(かひな)に浪の乗りてかたむく
ひとり凍れる浪のしぶきを眺め
海岸の砂地に生える松の木の梢を眺め
ここの日向(ひなた)に這(は)ひ出づる虫けらどもの感情さへ
あはれを求めて砂山の影に這ひ登るやくな寂しい日だ
遠くに冬の海の光をかんずる日だ
ああわたしの憂愁のたえざる日だ
かうかうと鳴るあの大きな浪の音をきけ
あの大きな浪のながれにむかつて
孤独のなつかしい純銀の鈴をふり鳴らせよ
わたしの傷(いた)める肉と心。



日本詩人全集14  
萩原朔太郎

昭和41年12月10日発行 
著作者萩原朔太郎 
発行所株式会社新潮社



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