夏の詩 中也

2014/ 07/ 11
                 
 中原中也の詩には、春夏秋冬の季節を題に表した詩が多いです。
 「夏」を題にした詩も数多くあります。
 「夏は靑い空に……」、「夏の海」、「夏の日の歌」、「夏の夜」、「夏の晝」、「夏」、「夏と私」、「初夏」、「初夏の夜」、「初夏の夜に」、「逝く夏の歌」、「都会の夏の夜」、「夏過けて、友よ、秋とはなりました」、「夏の記憶」、「夏と悲運」、「夏の夜の博覧会はかなしからずや」などです。題を「夏」としない詩にも、詩文の中に「夏」が、風情においても「夏」が、そして心象風景にも「夏」が、詞によってちりばめられていることに、私たちは気づいています。
 中也も、私の青春という、時代を包んだ詩人のうちの一人でした。
 中原中也生誕の地を、まだ訪れていません。


  《中原中也記念館開館20周年記念事業について
中原中也記念館は、平成26年2月で開館20周年を迎えたことを記念して、開館20周年記念事業を開催しています。
中原中也記念館
〒753-0056 山口県山口市湯田温泉1-11-21
湯田温泉駅から徒歩約8分
電話番号 083-932-6430
開館時間 5月~10月/9:00~18:00、11月~4月/9:00~17:00(入館はいずれも閉館30分前まで)
休館日 毎週月曜(祝祭日の場合は翌日)、毎月最終火曜日、12月29日~1月3日
http://www.chuyakan.jp/


   夏は靑い空に……

夏は靑い空に、白い雲を浮ばせ、
  わが嘆きをうたふ。
わが知らぬ、とほきとほきとほき深みにて
  靑空は、白い雲を呼ぶ。

わが嘆きわが悲しみよ、かうべを昂げよ。
 ――記憶も、去るにあらずや……
湧き起る歡喜のためには
  人の情けも、小さきものとみゆるにあらずや

ああ、神樣、これがすべてでございます、
  盡すなく盡さるるなく、
心のままにうたへる心こそ
  これがすべてでございます!

空のもと林の中に、たゆけくも
  仰(あほ)ざまに眼(まなこ)をつむり、
白き雲、汝が胸の上を流れもゆけば、
  はてもなき平和の、汝がものとなるにあらずや
             (推定一九二九・六)


   夏の海

輝く浪の美しさ
空は靜かに慈しむ、
輝く浪の美しさ。
人なき海の夏の晝。

心の喘ぎしづめとや
浪はやさしく打寄する。
古き悲しみ洗へとや
浪は金色、打寄する。

そは和やかに穩やかに
昔に聽きし聲なるか、
あまりに近く響くなる
この物云はぬ風景は、

見守りつつは死にゆきし
父の眼とおもはるる
忘れゐたりしその眼
今しは見出で、なつかしき。

輝く浪の美しさ。
空は靜かに慈しむ、
輝く浪の美しさ。
人なき海の夏の晝。
             (一九二九・七・一〇)

 (註) 本稿は抹消の意志があつたものの如く原稿の上に☓印あり。


   夏の日の歌

靑い空は動かない、
雲片(ぎれ)一つあるでない。
  夏の眞晝の靜かには
  タールの光も淸くなる。

夏の空には何かがある、
いぢらしく思はせる何かがある、
  焦げて圖太い向日葵(ひまはり)が
  田舎の驛には咲いてゐる。

上手に子供を育てゆく、
母親に似て汽車の汽笛は鳴る。
  山の近くを走る時。

山の近くを走りながら、
母親に似て汽車の汽笛は鳴る。
  夏の眞晝の暑い時。


    ≪所収≫
『中原中也全集 第一巻』
    〈未刊詩篇(其の一)〉
    昭和三十年五月三十日 再版発行
    發行所 株式會社 東京 創元社
      (第一巻のみ再版本で、第二巻、第三巻は初版本です。)
『中原中也全詩集』
    〈千部限定番号入り 62〉
    1972年10月20日 發行
    發行所 角川書店
      (この本は、数多ある「中原中也」発行本紹介の中に、載っていないようです。)


中原中也全集 -Ⅰ-

中原中也全詩集 限定千部 62
  
中原中也全詩集 角川書店版 ②

中原中也全詩集 角川書店版 ③







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