FC2ブログ
        

植物散歩 草木染 ・・・はは・・・

2020/ 06/ 28
                 

 はは嬉し機に織りなす草木染

 ちちの庭宝の山の草木染

 ちちははの織りなす庭の山野草


 巴旦杏201 -




 山藍もち擦れる衣着てただひとりい渡らす子は若草の夫かあるらむ
  ―万葉集 巻九 1742― 〈「山藍」(やまあゐ)=「アイタデ」、「タデアイ」ともいう〉


   草 木 染

 115 八重桜 -

 
 はじめて草木染を試みたのはシブキでした。シブキというのはヤマモモの樹皮を乾燥したもので、市販されています。これを細かく切って何度も煮出し、それを集めた茶色い汁を染液にします。この液に糸を浸し、二、三十分煮た後明礬(ミョウバン)を溶かした液に漬けて、また二、三十分おく。これを媒染(バイセン)といい、良い色を出し、しっかり染め付ける助けをします。これで糸は茶がかった黄色に染まります。この黄色の上に、蘇芳(スオウ)を染め重ねるとくすんだ赤になり、媒染剤を明礬(ミョウバン)でなく鉄にすると緑っぽいねずみ色、銅だと鮮やかな金色になります。

 111福寿草 -


 十七、八年前、主人の転勤で二年ほど松本で暮らしていたことがあります。当時は紬(ツムギ)ブームで、草木染の糸で縞を織り上げた信州紬は、素朴な味があり、人気があったようです。私も機織りがしてみたくなり、農家の納屋に眠っていた高機(〔たかばた〕手織り機の一種)をゆづりうけて、まず糸の染から始めたわけです。
 染め上がった糸の糊つけ、整経、チキリ巻き(経糸〈タテイトを〉巻く中央がくびれた棒状のもの)、綜絖(そうこう)通し〈よこ糸を通すヒ道をつくるためにたて糸をあげさせる道具〉、筬(おさ)通し〈たて糸の位置を整え、よこ糸を織り込むのに用いる織機の付属具〉、とたて糸をセットするだけでも数々の工程があり、馴れない者が一人でやるのは大層な手間で、帯一本と、着尺一反織り上げるのに随分長いことかかりました。
 その間に、手近にある梅の枝、栗の落花、くるみの樹皮、よもぎの葉等から染料をとることを教わりました。また媒染剤は、灰汁、明礬、木酢酸鉄(モクサクサンテツ)等の一般的なものから、銅、錫、クロム等の金属類の粉末を使うと、一段と発色も良く、堅牢な染め付けが出来るとのことでした。
 実際に染めのいろいろをしてみたのは、群馬へ帰ってからですが、主人が山の木や野の花等やたら植え込んであるお陰で、剪定した枝や葉、庭の草等材料は自給自足で済みました。

 113梅の花


 今までに試みたものをいくつか書いてみます。

 72カタクリの花 -


 媒染剤
灰汁=庭で木の葉や枝をいつも燃やしているので灰がたくさんできます。これを水に入れてかきまぜ、その上澄みを取って使う。
明礬=お湯に溶かして使います。
両方とも黄・茶の発色に使う。
木酢酸鉄=東京へ出た時染材店で蘇芳や他の媒染剤と共に購入しました。一度に使う量はごく少しなので、一瓶あれば何年も使えます。
ねずみ色・黒茶・青茶等に使う。
塩化第一錫=硫酸銅・酢酸クロム等よい色が出ますが、劇薬なのでこの頃はなるべく使わないようにしています。

 73アンズの花


 染料になる草木
杏=幹を削って煮出しして使います。芯の赤いものほどよく、灰汁で媒染するときれいなオレンジ色、鉄で媒染すると緑色がかったねずみ色。
梅=枝・葉も使えます。杏と同じに染めます。
八重桜=盛夏の頃の濃い緑色の葉を使い、灰汁で媒染するとピンクに近い肌色になります。とても美しい色ですが、しばらくおくと茶色味が出て来ます。草木染にはよくあることで、空気に晒されて次第に落ち着いた渋い色合いになり、それはそれでよい色ですが、淡いピンク色がそのまま保てたら、と残念にも思います。
くちなしの実=これは媒染剤などなくても良く染まります。
玉ねぎ=料理の度に表皮をとっておくと結構たまります。
明礬で黄色、灰汁だとそれより赤っぽくなります。
栗=木・葉・実の皮・落花、何でも染料がとれます。
灰汁、明礬で茶っぽい黄色、その上に鉄で媒染し、何度も染め重ねると栗色になります。
くるみ=これもよく色が出ます。鉄媒染で黒茶が出ます。
はぎ・のばら・よもぎ・ふじ・げんのしょうこ
=鉄で媒染すると、ねずみ系の色が出ますが、少しずつ色合いが違います。

 113梅の花


 色と言葉で表現するのはむずかしいことで、草木染ではほとんど黄・茶・ねずみといった色ですが、同じ植物を使っても、その濃度、媒染剤の種類と量によって様々な色に仕上り、そこに面白味もあります。
 赤味の色がほしい時には蘇芳を使います。シブキの黄色の上に重ねると錆朱のような色になり、杏や梅の上に重ねると、紅色に近くなります。
ヤマモモ=シブキという名で売っている樹皮の乾燥したものを使いました。媒染剤を使いわければ、黄、茶、オリーブ、黒ねずみに染まり、その上に蘇芳を重ねれば赤味の色、藍をかければ緑から黒まで色の種類も豊富で、染め付けもよく、非常によい染料植物です。生のものにはご縁がなくて、使ったことはありません。
アイタデ=庭に毎年種子がこぼれて、夏になると元気のよい葉でいっぱいになります。一度、生葉染めをしてみました。濃い緑の葉を集め、少しの水を差して擂り鉢で擂り、滓をしぼり捨てると、緑色の濃い汁が取れます。煮立てると色が悪くなるということなので、汁の中でしばらくもみながら染め付け、銅で媒染しました。緑がかった水色で青にはなりませんが、良い色です。
 青い色はクサギの実から取れるそうですが、たくさん集められませんから試してみたことはありません。
 以上少しばかりの経験を述べてみました。野山を歩けば染料になる植物は、このほかいくらでも見つけられると思います。

 114 椿一輪 -


 〈※註:「機織機」の説明の〔〕の中は、編集部で広辞苑を参考にして差し入れましたのでご了承願います。〉


 66フキノトウ.