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植物散歩 おけら ・・・ちち・・・

2020/ 06/ 29
                 

 父愛でる在りし日偲ぶ山野草

 父植えし庭百八つの山野草

  202水芭蕉


 8月29日は、父の命日です。
 『エッセイと探求 植物散歩』通巻11が、勉強部屋の書棚に置かれていました。6月26日のことです。


 恋しけば袖も振らむと武蔵野(むざしの)のうけらが花の色に出(ず)なゆめ  
 ―万葉集 巻十四東歌3376―
   〈「うけら」=「おけら」〉


 201 おけら.

 おけら

 おけらという奇妙な名前の草がある。
 又一方、虫にも、おけらと俗に呼ばれるものがある。辞書をひくと、虫のけら〔螻蛄〕は、直翅目の昆虫、コオロギに似て、体長約三センチメートル、前胸は卵形に膨大し、暗褐色で硬化した前翅と短小な後翅とを有する。前翅は大きく、土を掘るのに適する。昼間は土中に潜み、夜、飛び、よく燈火に来る。農作物を食害、夜間涼しい声を出して鳴く、これを俗に「みみずが鳴く」という。と説明されているが、百聞は一見に如かずで説明よりも現物を一度見ればわすれられない、いやらしい虫である。
 
  ツタ203 アケビ

 ここに述べるのは草の方のおけらである。
余り知られていないものなので、又辞書の説明を見よう。

 おけら〔朮〕、キク科の多年草、茎は下部木質、春宿根から出た若芽は多くの白軟毛を被る、高さ約六〇センチメートル、葉は硬質で鋭い刺状の鋸歯をもち、深く羽状に分裂することも多い、秋、白色、まれに淡紅色の頭状花を開き、周囲に総苞を具える。根は漢方の健胃薬、屠蘇散とし、また、蚊遣りに用いる。若芽は食用、古名「うけら」と説明されている。

  204庭の野草

 この草の特徴は、人の目につかない目立たないことにあるので、山歩きしても余り気がつかないのである。従って知っている人も余り無いのではなかろうか。この草を何年か前に垣根のそばに、ちからしばと並べて植えておいた。気付く人は無いだろうと思っていたところ、此の間(冬の寒さの残る三月)これの枯れた茎の上の惚けた枯花(総苞の形がおおしろい)の様子が目にとまり、欲しいと申し込まれたのには、ビックリしたのである。おけらよ、お前を見い出して下さった方に感謝せよ、と心の内で思ったことである。

  207福寿草

 茶の湯の心得のある方らしく、茶室にでも飾るのではないかと、想像してみたのである。茶花として売られているものもいろいろとあるのであろうが、おけらの花は売られていないであろう。又、山草を売っているところにも、おけらは見当たらないであろう。

  ムベ.

 私が、このおけらという草を知ったのは、松田修氏の「日本の花」からである。そして、万葉の恋歌も知ったのである。
 恋しけば 袖も振らむと 武蔵野の うけらが花の
 色に出なゆめ
 恋しいから袖も振りましょう、しかし武蔵野のうけらの花の目立たないように、世間の人達に知られないように、こっそりとふるまいましょう、とでも解釈したらよろしいか。
 万葉人は、ほんとにつまらぬ草にも、その特徴を、実によくつかんで、恋歌にまで読み込んでいるものと、感心する他はない。