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冬の詩  中也

2015/ 01/ 25
                 
 
 冬の詩 中也  Ⅱ


中原中也の詩より「冬の詩」


 汚れつちまつた悲しみに・・・・・・  

汚(よご)れつちまつた悲しみに
今日(けふ)も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる

よごれつちまつた悲しみは
たとへば狐(きつね)の革裘(かはごろも)
汚れつちまつた悲しみは
小雪のかかつてちぢこまる

汚れつちまつた悲しみは
なにのぞむなくねがふなく
汚れつちまつた悲しみは
倦怠(けだい)のうちに死を夢む

汚れつちまつた悲しみに
いたいたしくも怖気(おぢけ)づき
汚れつちまつた悲しみに
なすところもなく日は暮れる・・・・・・


≪『曇天(どんてん)』と同じく、あまりに有名な中原中也の詩、『汚れつちまつた悲しみに・・・・・・』。
 冬をうたいこんだ詩としては、『生(お)ひ立ちの歌』もまた、人の心をはなさない詩として、中也ファンの記憶に深く留めています。


 生(お)ひ立ちの歌

  Ⅰ

   幼年期
私(わたし)の上に降る雪は
真綿(まわた)のやうでありました。

   少年期
私の上に降る雪は
霙(みぞれ)のやうでありました

   十七 - 十九
私の上に降る雪は
霰(あられ)のやうに散りました

   二十 - 二十二
私の上に降る雪は
雹(ひよう)であるかと思はれた

   二十三
私の上に降る雪は
ひどい吹雪(ふぶき)とみえました

   二十四
私の上に降る雪は
いとしめやかになりました・・・・・・

 Ⅱ

私の上に降る雪は
花びらのやうに降ってきます
薪(たきぎ)の燃える音もして
凍(こほ)るみ空の黯(くろ)む頃

私の上に降る雪は
いとなよびかになつかしく
手を差伸べて降りました

私の上に降る雪は
熱い額(ひたひ)に落ちもくる
涙のやうでありました

私の上に降る雪に
いとねんごろに感謝して、神様に
長生(ながいき)したいと祈りました

私の上に降る雪は
いと貞潔でありました



 中也の冬の詩としては、『雪の宵』、『冬の日の記憶』、『頑是(ぐわんぜ)ない歌』なども印象に残っていますが、ここでは、『雪が降っている・・・・・・』を載せて、冬の幕を閉じたいと思います。
 (今回も前回に続き、白鳳社発行の愛蔵版『中原中也詩集』神保光太郎編を使用しました。)



 雪が降ってゐる・・・・・・  中原中也


雪が降ってゐる、
  とほくを。
雪が降ってゐる
  とほくを。
捨てられた羊かなんぞのやうに
  とほくを。
雪が降ってゐる、
  とほくを。
たかい空から、
  とほくを、
とほくを
  とほくを
お寺の屋根にも、
  それから、
お寺の森にも、
  それから、
たえまなしに、
  空から
雪が降ってゐる
  それから、
兵営にゆく道にも、
  それから、
日が暮れかゝる、
  それから、
喇叭(ラッパ)がきこえる。
  それから、
雪が降ってゐる、
  なほも。     (1929・2・18)


  

  




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