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わたしはムウ   -1-

2015/ 02/ 16
                 
 
 神奈川・東京から埼玉へ ①


 わたしは犬です。
 名前はムウ。
 1才半になって、この家の住人となりました。
 1988年6月4日のことです。
 あとで聞いた話ですが、この家は当時の住宅公団の入居者募集の抽選に当選した新築戸建ての一つでした。
 子どものいない夫婦が入居した日が1986年12月6日で、奇しくもわたしが生まれた日と重なっていました。

 奥さんの名前は宏侑(こうゆう)さんです。宏侑さんの姉さんのゆうさんが東京から車にわたしを乗せて来ました。宏侑さんにはもう一人姉さんがいますが、その名をさやさんといいます。わたしを宏侑さんの家に引き合わせてくれた命の恩人です。命の恩人などと大げさな表現と思われるでしょうが、そのいきさつはのちほどお伝えすることにします。わたしはこの二人の女性のおかげで、この日から数えて12年間、三人一緒の生活をおくるようになりました。
 
 宏侑さんの連れは想(そら)さんという名前です。この日から女一人と男二人の三人家族となりました。
 わたしは三日間というもの、一回も鳴きもせず吠えもしませんでした。これも想さんからあとで聞いた話ですが、彼いわく一週間はうんともすんともいわなかったと記憶していたとのこと。それほどわたしは無口に徹していました。
 どうしてかといいますと、ひとことでいえば環境の激変とこれからわたしはどうなるのだろうかという不安と心配と、そしてこの二人はどういう人なのか皆目見当がつかなかったと、そんな思いが入り混じっていたからかもしれません。もうしわけありません、ひとことではなかったですね。ふたこと、みこと以上の気持ちが錯綜していました。
 何しろ犬の1才半は人間でいえば立派な成人です。二人のわたしへの振る舞いを何日も黙って見続ける日が続きました。


 コチョウラン①






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