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5月の詩 谷川俊太郎

2015/ 05/ 10
                 
 言葉 

何もかも失って
言葉まで失ったが
言葉は壊れなかった
流されなかった
ひとりひとりの心の底で

言葉は発芽する
瓦礫(がれき)の下の大地から
昔ながらの訛(なま)り
走り書きの文字
途切れがちな意味

言い古された言葉が
苦しみゆえに甦(よみがえ)る
哀(かな)しいゆえに深まる
新たな意味へと
沈黙に裏打ちされて

⑪



 谷川俊太郎詩集「すき」より

いっしょうけんめい 一ねんせい
どろんこかぜのこ 二ねんせい
しつもんいっぱい 三ねんせい
おかのふもとの がっこうは
きょうをあすへと はこんでく
けんかでなかよし 四ねんせい
ゆめがふくらむ 五ねんせい
おとなにまけるな 六ねんせい
つつじのかおる がっこうは
うちゅうめざして すすんでく

②めがね橋



一心

生きのびるために
生きているのではない
死を避けるために
生きているのではない

そよ風の快さに和む心と
竜巻の禍々(まがまが)しさに怯(おび)える心は
別々の心ではない
同じひとつの私の心

死すべきからだのうちに
生き生きと生きる心がひそむ
悲喜こもごもの
生々流転の

③アプトの道



 もし言葉が

黙っていた方がいいのだ
もし言葉が
一つの小石の沈黙を
忘れている位なら
その沈黙の
友情と敵意とを
慣れた舌で
ごたまぜにする位なら

黙っていた方がいいのだ
一つの言葉の中に
戦いを見ぬ位なら
祭りとそして
死を聞かぬ位なら

黙っていた方がいいのだ
もし言葉が
言葉を超えたものに
自らを捧げぬ位なら
常により深い静けさのために
歌おうとせぬ位なら

⑤波面





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