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数と夕方  管 啓次郎

2018/ 01/ 29
                 
 手のひらに乗るようなサイズで言葉がぎっしりと詰まっている。少し厚めの管啓次郎の新刊『数と夕方』(左右社)が届いた。かつて旅の空で、あるヨーロッパの詩人が小さな手帳を開いて、びっしりとメモしている場面を見かけたことがある。そんな印象をふと懐かしく想(おも)い起こした。持ち運びやすい軽快な印象がある。異郷の生活や文化に精通して、都市や近郊を常に往(い)き来している行動派のこの詩人の伸びた背中が見えてきたような気がした。

 「起きなさい、目を覚まして/心があの洞窟を思い出す前に/いま起きれば、ぼくの部屋を起点とする/風の旅にきみも乗ることができるよ」。彼はこれまで、地・水・火・風などの元素を大きな主題に据えた詩作に、ずっとこだわり続けてきた。遠い空と雲の光に誘われるがごとく、漂泊の思いに駆り出されて風景を横断してきた日々がそこにあった。読むほどに詩のスケールの大きさが伝わる。正に小さな巨人のような一冊である。

 自然のダイナミズムとの対峙(たいじ)やあるいはその繊細さと親しむ姿勢が随所にある。「生に耐えられなくなった者たちは叫びを上げる。その叫びがつぶやきやささやきや沈黙というかたちをとる者もいる」とあとがきで記しているが、どの旅の途上にあったとしても「叫び」をあげたい誰かが道端にたたずむことを忘れない。それは例えば怒声や絶叫などの大声ばかりではない。形を変えたか弱い声であったり、黙り込むしかないことであったり。
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詩の橋を渡って
「削れと堆積」への視線=和合亮一(詩人)
毎日新聞2018年1月23日 東京夕刊
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