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 雪の詩

2018/ 03/ 22
                 
 2018年3月21日、春の雪が降っています。
 冬をうたっているのが、冬の詩だと思われますが、 雪の詩は、冬のみをうたっているのでしょうか。


 
 20180321 雪もよう



三好達治 「雪」(詩集『測量船』より)

太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。


 12-1
 3-14-1



ボリス・パステルナーク (〈※〉) 「雪が降る(抜粋)」

雪がふる 雪がふる
さながら ふるのは 雪片ではなく
つぎだらけの古外套(ふるがいとう)をまとって
大空が 地上へ降りてくるようだ

さながら 奇人めいたしぐさで
うえの階段の 踊り場から
こっそりと 隠れん坊遊びをしながら
空が 屋根裏から降りてくるようだ

それは 人生が待ってくれないということだ

雪がふる 厚ぼったく 厚ぼったくふる
雪と歩調をあわせて 同じ足どりで
あるいは 同じすばやさで
たぶん 時間も すぎてゆくのだろう

たぶん 年は 年を
追ってゆくだろう 雪がふるように
あるいは 長詩のなかの言葉のように

雪がふる 雪がふる
雪がふると 何もかも あわてふためく
すっかり白くなった道行く人も
びっくりしている木や 草も
十字路の曲がり角も


(〈※〉:「雪が降る」は1957年の作詩。ボリス・パステルナークは、同年、長編小説「ドクトル・ジバゴ」を著しています。*本作品に対する「ノーベル文学賞」受賞と辞退についてのことの顛末はページが足りないなどということもあり割愛。*アメリカとイタリアによる合作映画『ドクトル・ジバゴ』は、1965年に制作されました。*宝塚歌劇団星組によるミュージカル『ドクトル・ジバゴ』公演(2018年2月4日~2月13日)は、記憶に新しいところですね。
 《~ボリス・パステルナーク作「ドクトル・ジバゴ」より~
脚本・演出/原田 諒
 ・ロシアの作家ボリス・パステルナークの代表作「ドクトル・ジバゴ」。1965年の映画版を筆頭に、それ以降も度々映像化されるなど、世界中の多くの人に愛され続けてきた不朽の名作小説を、オリジナル・ミュージカルとして舞台化致します。
 ・20世紀初頭、革命前後の動乱期のロシアで、純真な心を持つ詩人でもある医師ユーリ(ユーリイ・アンドレーヴィチ・ジバゴ)と、彼が愛し続けた運命の女性ラーラが辿る波瀾の生涯を描く。悠久のロシアの大地で、時代のうねりに翻弄されながらも懸命に生きた人々の軌跡、そして愛の形を鮮烈に描き上げる大河ロマン。》)


 5-16-1



堀口大學 「雪」

 雪はふる! 雪はふる!
 見よかし、天の祭なり!
 空なる神の殿堂に
 冬の祭ぞ酣(たけなわ)なる!


 910
 1112



金子みすゞ 「積もった雪」「淡雪」(『金子みすゞ全集』)

積もった雪

上の雪
 さむかろな。
 つめたい月がさしていて。

下の雪
重かろな。
何百人ものせていて。

中の雪
さみしかろな。
空も地面(じべた)もみえないで。


  1314


淡雪

雪がふる、
雪がふる。

落ちては消えて
どろどろな、
ぬかるみになりに
雪がふる。

兄から、妹から、
おととにいもと、
あとから、あとから
雪がふる。

おもしろそうに
舞いながら、
ぬかるみになりに
雪がふる。


 1516
 1718



宮沢賢治 「冬と銀河ステーシヨン」(『心象スケッチ 春と修羅』より)

そらにはちりのやうに小鳥がとび
かげろふや青いギリシヤ文字は
せはしく野はらの雪に燃えます
パツセン大街道のひのきからは
凍つたしづくが燦々(さんさん)と降り
銀河ステーシヨンの遠方シグナルも
けさはまつ赤(か)に澱んでゐます
川はどんどん氷(ザエ)を流してゐるのに
みんなは生(なま)ゴムの長靴をはき
狐や犬の毛皮を着て
陶器の露店をひやかしたり
ぶらさがつた章魚(たこ)を品さだめしたりする
あのにぎやかな土沢の冬の市日(いちび)です
(はんの木とまばゆい雲のアルコホル
 あすこにやどりぎの黄金のゴールが
 さめざめとしてひかつてもいい)
あゝ Josef Pasternack の指揮する
この冬の銀河軽便鉄道は
幾重のあえかな氷をくぐり
(でんしんばしらの赤い碍子と松の森)
にせものの金のメタルをぶらさげて
茶いろの瞳をりんと張り
つめたく青らむ天椀の下
うららかな雪の台地を急ぐもの
(窓のガラスの氷の羊歯は
 だんだん白い湯気にかはる)
パツセン大街道のひのきから
しづくは燃えていちめんに降り
はねあがる青い枝や
紅玉やトパースまたいろいろのスペクトルや
もうまるで市場のやうな盛んな取引です

(一九二三、一二、一〇


 1920



中原中也

生い立ちの歌
 
   Ⅰ

    幼 年 時
私の上に降る雪は
真綿(まわた)のようでありました

    少 年 時
私の上に降る雪は
霙(みぞれ)のようでありました

    十七〜十九
私の上に降る雪は
霰(あられ)のように散りました

    二十〜二十二
私の上に降る雪は
雹(ひょう)であるかと思われた

    二十三
私の上に降る雪は
ひどい吹雪(ふぶき)とみえました

    二十四
私の上に降る雪は
いとしめやかになりました……

   Ⅱ

私の上に降る雪は
花びらのように降ってきます
薪(たきぎ)の燃える音もして
凍(こお)るみ空の黝(くろ)む頃

私の上に降る雪は
いとなよびかになつかしく
手を差伸(さしの)べて降りました

私の上に降る雪は
熱い額(ひたい)に落ちもくる
涙のようでありました

私の上に降る雪に
いとねんごろに感謝して、神様に
長生(ながいき)したいと祈りました

私の上に降る雪は
いと貞潔(ていけつ)でありました


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