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江戸時代 犬のお伊勢参り

2019/ 03/ 31
                 
 

  「伊勢神宮 宮川の渡し」歌川広重 〈おかげ犬(しめ縄をつけた白い犬)〉
その5  歌川広重 


  三重大学図書館蔵 歌川広重 「伊勢神宮 宮川の渡し」
 その3 三重大学図書館蔵



〔コラム〕
 街道が整備され、お伊勢参りや金毘羅参りが庶民の間にも定着していく中で、「犬のお伊勢参り」という世にも面白い現象が出現した。
 これは、人が飼い犬を連れてお参りするのではなく、歳を取るなどして自力でお参りできなくなった飼い主(人)に代わって、犬が、首にお布施を下げて伊勢まで旅をし、参拝する、つまり「犬のお遣い」なのである。
 参拝に赴く犬が道中、食べ物や水、休憩場所を与えられたり、道案内をしてもらったり、時には首の巻物が重かろうと持ってあげる人が現れたり、お金を袋に入れてくれたりと、多くの人の助けを得てお伊勢参りを果たし、無事に飼い主のところへ戻ったということだ。俄かには信じられない話だが、詳細な記録がいくつも残っている。
 「犬のお伊勢参り」の最初の記録は、明和八年(1771)、山城国(現在の京都府南部)の高田善兵衛という人の犬が、外宮(げくう)、内宮(ないくう)に参拝したというものだが、次第に全国に広まったようで、多くの書物に記されている。
 なかには、安芸国(現在の広島県西部)から伊勢にお参りした豚の話まであり、これはさすがに「珍しきこと」と書かれている。(「耳囊〈みみぶくろ〉 )。
 このエピソードに接して、まず驚き知るのは、当時の日本の津々浦々の治安がいかに良かったか、市井の人々がいかに暢気な優しさを備えていたかである。貧しく治安の悪い国であれば、犬が首にお金など巻いて歩いていたら、たちまち捕まって金を盗られ、犬も食べられていただろう。
 この話からは、当時の日本人の物心両面の豊かさはもちろんのこと、現代の日本人にも通じる巡礼者への接し方、動物への独特な接し方をも見ることができる。
 ‐日本国紀 著者 百田直樹 発行所 株式会社幻冬舎 2018年11月10日第1刷発行‐ 

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