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井上靖 詩の中のことば「好きだ」

2019/ 08/ 02
                 
 詩にのこす井上靖家族への言葉の綾をたれぞかは知る


 1-1井上靖記念館 2012年6月19日
  (旭川市「井上靖記念館」2012年6月19日訪問.)


 先日の7月25日、NHK BSプレミアム シリーズ深読み読書会「井上靖“敦煌”」(再放送)を、何気なく見ていました。
 出演者の、高橋源一郎さんだったか、小林恭二さんだったか、中島岳志(たけし)さんだったか、が、井上靖の詩が大好きだといって、詩集の中から一つの詩を選んで朗読し始めました。
 私は、作家の詩としては、高見順の「死の淵より」くらいしか読んでいなかったので、とても興味深く感じました。

 数日前、近くにある図書館に足を運びました。
『井上靖全詩集』(出版社新潮社.1979年12月発行.定価3500円.465p)を手に取りました。
 端から端まで一通り目を通してみました。
 いわゆる詩人の詩とはちがった趣の文体でした。
 幾つか思ったことがありました。
 一つは「好きだ」、「好き」という文字が随分とあちこちにストレートに書かれていることでした。
 一つは、季節の中で一番好きなのが「夏」ということで、夏の詩が多く書かれていることでした。
 一つは、「死」もしくは「死の周辺部分」に対する独特な表現を、あちこちの詩の中で繰り返し書いていることでした。
 一つは、生い立ちとの関係が深いのでしょうか。まわりの家族との繋がりが独特な言い回しで書かれてあることでした。それらの語彙が具体的に何をあらわすのか、という憶測の領域には、踏み込んでいくことはできませんでした。



  颯秣建国

往古ソクド人たちは砂漠の中に要塞都市を作り、マラカ
ンダと名付けた。いまのサマルカンドだ。西紀前三二九
年に、西欧から来た侵掠者が灰にしてから、この都市は
今日まで十何回か興廃を繰返し、その度に異なった種族
の都になる運命を持った。悉万斤国、颯秣建国、薩未韃
国、撒馬爾罕国、中国の史書は時代時代でサマルカンド
にさまざまな文字を当てているが、私は大唐西域記に記
されている颯秣建国というのが好きだ。この四文字だけが
興亡と離散の匂いを持っていない。事実また西域記には、
土地は沃壌、気序は和暢(わちょう)、多く善馬を出し、人性は勇烈
と註がつけられてある。――ただ遺憾なのは、この名前
の使われた時期が頗る短かったということだ。


 
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