FC2ブログ
        

きみ   【獲物】

2013/ 03/ 16
                 
野うさぎ

 気付いたのが、一呼吸遅かった。
 荒川の土手の斜面、野うさぎが脱兎のごとく駆け下りる。
 きみは、追う。
 きみより一回り小さい物体は転げ落ちるように一目散に逃げる。
 
 二匹はゴルフ場を斜めに横切っていく。
 キャディさん、プレーヤー3人、しばしプレーを中断して眺めている。

 わたしたちは四人に手を振る。
 スミマセーン!

 四人は交互に手を振って答える。
 カッコいい…とかえってきたのは、女性の声。

 野うさぎ、竹藪の中。
 タッチの差。
 きみは、まだあたりをかぎまわっている。

 (とり逃して)良かった!
 宏有さんは、つぶやく。
 ホッとしたネ。
 わたしは、そのあと、
 惜しかったと独り言つ。


野ネズミ

 きみはウンッ?というように、ちょっと首をかしげて刈り取った稲藁の底の方に聞き耳を立てる。
 そしてすぐさま、まるでキツネのようにピョーンときみは跳びあがる。

 からだ全体が宙に浮く。
 両手両足が空中から稲藁に突っ込んだと同時に、顔をさらに奥深く潜り込ませていく。

 野ネズミが、向かい側の稲藁の下の方から、チョコチョコと逃げていく。
 かれは、また首をかしげるしぐさをする。
 あれ、音がしなくなったぞというように、また首をかしげるしぐさをする。

 (とり逃して)良かった!
 宏有さんは、つぶやく。
 ホッとしたネ。
 わたしは、そのあと、
 ザンネンデシタと独り言つ。


イタチ

 たくさんのカラスが地上に下りて何やら突っついている。
 かれが目ざとく見つけて、脱兎のごとく駆け寄っていく。

 カラスたちは、カアカア鳴きながら跳びあがっていく。
 小さな動物が横たわっている。

 コドモのイタチ。
 かれは軽く口にくわえてわたしたちに見せに持ってくる。
 どうするのかと問うている。

 宏有さんは、かれからそのまだぬくもりのある小さなからだを受け取る。
 わたしはかれの頭をなでる。

 あとは任せたよ。
 というように、かれは尾を振ってから、まだ居残っているカラスたちを追い散らかしに走っていく。



❀「脱兎のごとく」を、「野うさぎ」のときに使うのは、ご本人そのものですから、適切でないようです。「イタチ」のときは、うさぎでないかれが走っているのですから、正しい使い方だと思えます。


 
関連記事
スポンサーサイト



                 

コメント