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哀しみの女君たち ―『源氏物語』のヒロイン・二十四抄― 豊田芳子著

2020/ 03/ 14
                 
 哀しみの主役は女いつの世も


 1-1哀しみの女君たち 表紙
   著者 豊田芳子
   表紙 畔蒜多恵子
   題字 中村洋子




  〈 「大宮」って誰、と思われる方もいらっしゃるでしょう。彼女は光源氏の色恋に絡む話のヒロインとして登場する女性ではありません。ですから、知名度としてもこれまで取り上げてきた女君に比べ極端に低いはずですが、わたしはこの方がとても好きなので、ここに取り上げることにいたしました。…「大宮(おおみや)」122p  〉



 千年も前にさかのぼる平安時代中期の貴族の物語。
 源氏物語は絵巻としても、私たち日本人のみならず、世界の人々にもつとに知れわたっています。
〈『源氏物語』が発表されて約150年後の平安末期に、最初の『源氏物語絵巻』が描かれましたが、現在国宝に指定されているのは二つです。〉

 『哀しみの女君たち ―源氏物語のヒロイン・二十四抄―』は、令和2年(2020年)2月10日に発行されました。
 凡そ75年にわたる大河ドラマ『源氏物語』を、作者紫式部はどのような世界観をもって描いたのか。
 著者豊田芳子氏は、身分制度が徹底されている平安時代貴族の女性たちにスポットをあてた、それぞれの抄に登場する彼女たち一人ひとりが主人公であるという捉え方をして、焦点をあてて書きこんでいます。
 身分の上下による差別の烈しい貴族社会、そこに身を置く彼女たちのおもいのたけ、我が身になぞらえている場面も紫式部は演出していた、そんな風にも読み解くことができる本著となっています。
 言い換えれば、光源氏は主役ではない。彼は源氏物語のヒストリーをつなげていく狂言回しのような役割の人物・・・と感じた筆致で描いています。
 「哀(かな)しみの女君(おんなぎみ)」、一人ひとりにとっては、自分の身の回りのことの空間世界です。そのこと故に私たち読み手にとっては、『源氏物語』をいわゆるオムニバス風に俯瞰して眺めることも知らずのうちにしています。
 豊田芳子氏は、はたして私たち読者をどこに導き出そうとしているのでしょうか。
 たんに現代語訳を専らにするのではなく、選ばれたヒロイン・二十四抄の中に、著者のその答えが隠されているように思いました。
 登場するヒロインの中で六条御息所が一番好きな女君と、女史は記しています。
 何故好きなのか。興味が湧くところです。
 あと、2~3回読み直せば、さらに違った味わいも読み取ることができる、そんな思いを抱かせた一冊でした。



短歌草原叢書
哀しみの女君たち―『源氏物語』のヒロイン・二十四抄―
  令和2年(2020年)2月10日発行
著 者 豊田 芳子 
編 者 香川  節
発行所 短歌草原社
発 売 揺籃社
 

目次
序文 ・・・・・・・・ 香川 節 ・・・ 1
はじめに ・・・・・・ 豊田芳子 ・・・ 5
凡例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
第一部 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
 桐壷の更衣 16
 弘徽殿の女御 20
 空蝉 27
 夕顔 33
 紫の上(その1) 38
 末摘花 44

  〈 「源氏物語に登場する女性たちは皆、それぞれの不幸を背負っているけれど、その中でも一番幸せと言えるのは誰かしら?」と訊いた時、「末摘花」を挙げた方があります。「気がつかない」のは幸せ、つまり「鈍感力」が彼女の救いになっているというのです。末摘花の「鈍感力」は、この後も遺憾なく発揮されます。…「末摘花(すえつむはな)」46p 〉

 藤壷 51
 朧月夜 57

 〈 いとあるまじきことと、いみじくおぼし返すもかなはありけり(いかにもあってはならないことと、何度も何度も思い返してみるのだけれど、自分ではどうすることもおできにならないのであった。と、作者はこの時の光源氏の心境を記しています。
 理屈では割り切れない源氏の君の性癖がここに記されているのですが、これは千年経っても変わらない人間の性(さが)を鋭く言い当てている一文だと思います。…「朧月夜(おぼろづきよ)」64p 〉

 葵の上 66
 六条御息所 74

〈 生前には「生霊」となり、また死して後も「死霊」となって、光源氏の愛する女性に憑りつくという恐ろしいまでの情念の持ち主として登場する六条御息所ですが、意外にも「『源氏物語』の女君たちの中であなたが一番好きな人は誰ですか?」という質問には、「六条御息所」と答える読者が多いのです。私もその一人ですが、歌人の尾崎佐永子さんもその著書『源氏物語随想』において、次のように書いておられます。
以前、歌人の安永蕗子さん、馬場あき子さんと私の三人で「短歌」誌上で『源氏物語』の鼎談を永く続けている時期がある。その中で『源氏物語』の女君たちの中で誰が一番好きか、という話になった。その時、三人がまず挙げたのは異口同音に「六条御息所」だった。
なぜ私たちは「六条御息所」に心惹かれるのでしょう。それは彼女の女として苦悩する姿が、第九帖「葵」の巻、第十帖「賢木」の巻を通して、丹念に描写されているからだと思います。…「六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)74p」

 花散里 88
 
〈 近年、「癒し系」という言葉をよく耳にしますが、「花散里(はなちるさと)」は、まさにその「癒し系」の代表的な女性でありましょう。…「花散里(はなちるさと)」88p  〉

 明石の上 95
 秋好中宮 107
 朝顔 115
 大宮 122
 雲居雁 128
 玉鬘 137
 近江の君 145
 真木柱 151

 〈 玉鬘の出現で父親を奪われてしまった真木柱でしたが、三十余年の歳月の流れが、二人の立場をすっかり変えています。人生というものは、ほんとうに最後までどうなるか分からないものだ、と教えられている気がします。…「真木柱(まきばしら)」156p」

第二部 ・・・・・・ 157
 女三の宮 160
 紫の上(その2) 170
 落葉の宮 178
 
第三部 ・・・・・・ 187
 大君 190
 中の君 200
 浮舟 209

付 録 ・・・・・・ 227
 女君たちの出自一覧 227
 女君の関連系図 228
 『源氏物語』年立 230
 平安京内裏図 247
 主な参考文献 248

あとがき ・・・・・・ 豊田 芳子 ・・・ 249


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コメント

        

日々の暮らし
 こんばんは。
 このところ外出することが少なくなってきています。
 家では、本を読む時間が長くなっています。
 落ち着きましたら、また、ブログでの講読会のアップ、心待ちにしています。
 こちらこそ、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。v-410