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遠藤周作 『影に対して』 三田文学夏季号に掲載

2020/ 06/ 30
                 

 フーガ対位母なるものに何求む愛(アガペー)の影に自らを刻む

 死海のほとり.j


 『沈黙』と『深い河』の二冊が、生前の本人の遺言で棺に入れられています。
 遠藤周作死後のひところ、『死海のほとり』が何故に彼をして棺の中にという遺言がなされなかったのかというテーマアップされた文章が散見されていました。
先日、その文庫本が勉強部屋の棚に置いてあるのを見つけました。家人が数々読んだ本の中の一冊です。
 氏の未発表作品『影に対して』が、次に発刊される「三田文学」に掲載される予定ということが判りましたので、その前に読み通すことにしました。

 未発表作品は、遠藤文学の最大のテーマである「母」について、早い時期に向き合って書かれた自伝的小説だとのことです。
 宗教的な、キリスト教的な要素は入っていないような小説であるように〈今のところ〉思っています。

  遠藤文学のキリスト教感の底辺に潜んでいるであろうと思われる「父性原理」から「母性原理」へと辿っていく心の変遷が、『沈黙』から『死海のほとり』へと落とし込まれていく経過した時間の中に、フーガのように対位的に捉えたものが浮かび上がってくるのとはおのずから異なるのではありますが、氏の心の襞の一端を伺い知ることとなるのではないかなどと想像を膨らましているところです。

遠藤周作の愛〈アガペー〉の発見の旅、言い換えれば、〈p352〉人間の苦悩と痛みと弱さとを、そのままゆるし包みこんでくれると、解説に曰く、すぐれて「母なるもの」のやさしさを示していることと、母をテーマにした自伝的な小説とが、どこかでリンクしていくのか、はてまたメビウスの輪のように解くことに命題をおかない物語となっているのか、7月10日発売予定の三田文学夏季号が待ち遠しい限りです。


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