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雲 高村光太郎

2020/ 10/ 18
                 

 光太郎智恵子を映すかげ光


 20201018雲1


 高村光太郎の詩集「智恵子抄」は、昭和16年(1941年)8月に、龍星閣から刊行されています。
 ここに載せた詩「雲」は、それから5年後の昭和21年(1946年)に発表〈6月14日作詩、「週刊少国民」7月号掲載〉されました。
 智恵子との在りし日を胸の奥に秘めながら、戦後間もない日本の復興に思いを馳せる光太郎の心が、雲の流れに投影していたのかも知れません。



     高村光太郎

あの雲を見たまへ。
地面からたつ水蒸気の冷えてできた
小さな、小さな水玉の集団があの空だ。
大空のあそこからあそこまで、
何といふ大きなかたまりだらう。
なんといふりっぱさだらう。
見てゐるうちに形をかへて
ぐんぐんと進んでゆく。
太陽に色どられた空中のパレット、
光とかげとの運動會。
雲には雲の規律があり、
山にかかる形や位置まで
ちゃんと天氣の豫報をする。
小さな、小さな水玉が
あんなに大きな力を出す、
あの雲を見たまへ、
雲はいいなあ。
おもしろいなあ。

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