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国語の教科書で

2013/ 04/ 28
                 


 中学一年の国語の教科書に、島崎藤村の「千曲川旅情の歌」も載っていました。小諸に住んでいたということもあり、丸山先生に名指しされて読んだのがこの詩です。読後感想文も皆の前で読み上げました。

 高校一年の国語の教科書に、中原中也の詩が、(参考)というかたちで載っていました。中里先生に名指しされたので、中也の詩でいいのかと問うたところ、「参考ということで挙げた詩だからダメダ」といわれ、他の詩の朗読と、読後感想文を読み上げた記憶が蘇りました。

 阿刀田高さんが、中也の「湖上」の詩が好きだということを書いていたので、あのころの彼の詩を思い出すことともなりました。
 そういえば、太宰治生誕百年を記念して、幾年か前、太宰を主人公にした映画が三本上映されましたが、そのうちの一つの映画(『ヴィヨンの妻』。松たか子が、太宰の妻美知子役)のワンシーンに、中原中也の「山羊の歌」の詩集が映し出されていましたっけ。


曇天
 
 ある朝 僕は 空の 中に、
黒い 旗が はためくを 見た。
 はたはた それは はためいて ゐたが、
音は きこえぬ 高きが ゆゑに。

 手繰(たぐ)り 下ろそうと 僕は したが、
綱も なければ それも 叶わず、
 旗は はたはた はためく ばかり、
空の 奥処(おくか)に 舞ひいる 如く。

 かヽる 朝(あした)を 少年の 日も、
屢ゞ(しばしば) 見たりと 僕は 憶(おも)ふ。
 かの時は そを 野原の 上に、
今はた 都会の 甍(いらか)の 上に。

 かの時 この時 時は 隔(へだ)つれ、
此処(ここ)と 彼処(かしこ)と 所は 異れ、
 はたはた はたはた み空に ひとり、
いまも 渝(かは)らぬ この 黒旗よ。


汚れちまった悲しみに……

汚れちまった悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れちまった悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる

汚れちまった悲しみは
たとへば狐(きつね)の革衣(かはごろも)
汚れちまった悲しみは
小雪のかかってちぢこまる

汚れちまった悲しみは
なにのぞむなくねがふなく
汚れちまった悲しみは
倦怠(けだい)のうちに死を夢む

汚れちまった悲しみに
いたいたしくも怖気づき
汚れちまった悲しみに
なすところもなく日は暮れる……


別離

 1

さよなら、さよなら!
  いろいろお世話になりました
  いろいろお世話になりました

さよなら、さよなら!
  こんなに良いお天気の日に
  お別れしてゆくのかと思ふとほんとに辛(つら)い
  こんなに良いお天気の日に

さよなら、さよなら!
  僕、午睡(ひるね)の夢から覚(さ)めてみると
  みなさん家を空(あ)けておいでだった
  あの時を思ひ出します

さよなら、さよなら!
  そして明日(あした)の今頃は
  長の年月見馴(みな)れてる
  故郷の土をば見てゐるのです

さよなら、さよなら!
  あなたはそんなにパラソルを振る
  僕にはあんまり眩(まぶ)しいのです
  あなたはそんなにパラソルを振る

さよなら、さよなら!
さよなら、さよなら!


山上のひととき

いとしい者の上に風が吹き
私の上にも風が吹いた

いとしい者はたゞ無邪気に笑ってをり
世間はたゞ遥か彼方(かなた)で荒くれてゐた

いとしい者の上に風が吹き
私の上にも風が吹いた

私は手で風を追ひのけるかに
わづかに微笑(ほほゑ)み返すのだった

いとしい者はたゞ無邪気に笑ってをり
世間はたゞ遥か彼方で荒くれてゐた


春宵感懐 (しゅんせうかんくわい)

雨が、あがって、風が吹く。
 雲が、流れる、月かくす。
みなさん、今夜は、春の宵(よい)。
 なまあつたかい、風が吹く。

なんだか、深い、溜息(ためいき)が、
 なんだかはるかな、幻想が、
湧(わ)くけど、それは、摑(つか)めない。
 誰にも、それは、語れない。 

誰にも、それは、語れない。
 ことだけれども、それこそが、
いのちだらうぢゃないですか、
 けれども、それは、示(あ)かせない……

かくて、人間、ひとりびとり、
 こころで感じて、顔見合わせれば
にっこり笑ふといふほどの
 ことして、一生、過ぎるんですねえ

雨が、あがって、風が吹く。
 雲が、流れる、月かくす。
みなさん、今夜は、春の宵。
 なまあつたかい、風が吹く。


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