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夢を売る男

2013/ 09/ 06
                 
最新書き下ろしは、出版会を舞台にした掟破りのブラックコメディ!

百田尚樹の書き下ろし小説。手元にある本の奥付を見ると、2013年2月26日、初版第一刷発行。とあります

 目次
 1 太宰の再来 ・・・・・ … 5
 2 チャンスを摑む男 ・・ … 37
 3 賢いママ ・・・・・・ … 96
 4 トラブル・バスター ・ …122
 5 小説家の世界 ・・・・ …158
 6 ライバル出現 ・・・・ …187
 7 戦争 ・・・・・・・・ …218
 8 怒れる男 ・・・・・・ …244
 9 脚光 ・・・・・・・・ …261
10 カモ ・・・・・・・・ …274

 ・帯カバーを折った側の8行には、次のように書かれています。
 敏腕編集者・牛河原勘治の働く丸栄社には、
 本の出版を夢見る人間が集まってくる。
 自らの輝かしい人生の記録を残したい団塊世代の男、
 スティーブ・ジョブズのような大物になりたいフリーター
 ベストセラー作家になってママ友たちを見返してやりたい主婦……。
 牛河原が彼らにもちかけるジョイント・プレス方式とは―――。
 現代人のふくれあがった自意識と
 いびつな欲望を鋭く切り取った問題作。


夢を売る男 百田尚樹

 
 小説本文で、目に付いた箇所です。
 「まあ、今言ったのは極端なケースだが、心に闇を抱えた人間は本を出すことで、憑きものが落ちたみたいになることが少なくない。大垣萌子も少しは楽になるだろう」
 「なるほどね」
 「だから、この商売は一種のカウンセリングの役目も果たしているんだよ」
 牛河原はそう言うと美味そうにタバコを吸った。

 ・・・ ・・・ ・・・

 「大手出版社というところは、乱暴に言えば、本を出すノルマみたいなものがある。だから、いつのまにか機械的に本を出すようになる。会社の都合で、誰にも求められない本が生まれては消えていくんだ。本が売れなくなった理由にはそれもある。で、俺はもう売れないとわかっている本は出さないことに決めた」
 牛河原は静かな声で言った。
 「だがな―――俺は夏波書房の編集長時代、部下の編集者がどうしてもこれを出したい、何が何でも出したい、そう言ってきた本なら、必ず出した。それが俺の編集長としての矜持(きょうじ)だった」
 飯島ははっとしたように顔を上げた。
 「そのばあさんの本は、丸栄社が全額出して出版しよう」
 飯島は口をぽかんと開けたまま、返事もできないでいた。荒木もまた呆然(ぼうぜん)と牛河原を見つめていた。
 「うちも出版社だ。編集者が本当にいい原稿だと心から信じるものなら、出す。そして出す限りは必ず売る!」
 「―――部長」
 飯島はそう言ったが、あとは言葉にならなかった。
 「細かい話はまた明日だ。とっとと帰れ」
 牛河原はそう言うと、椅子を元に戻した。
 「じゃあ、原稿を置いておきます。あとで読んでください」
 飯島は流れる涙を拭(ぬぐ)いもせずに、原稿用紙の入っている封筒を牛河原に差し出した。
 しかし牛河原はそれを手で押し返すと、鼻くそをほじりながら言った。
 「とっくに読んでいる。いい原稿だった」





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