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高村光太郎

2013/ 09/ 07
                 
智恵子抄

 亡き人に

雀はあなたのやうに夜明けにおきて窓を叩く
枕頭のグロキシニヤはあなたのやうに黙って咲く

朝風は人のやうに私の五体をめざまし
あなたの香りは午前五時の寝部屋に涼しい

私は白いシイツをはねて腕をのばし
夏の朝日にあなたのほほゑみを迎へる

今日が何であるかをあなたはささやく
権威あるもののやうにあなたは立つ

私はあなたの子供となり
あなたは私のうら若い母となる

あなたはまだゐる其処にゐる
あなたは万物となって私に満ちる

私はあなたの愛に値しないと思うふけれど
あなたの愛は一切を無視して私をつつむ


・日本詩人全集 9  高村光太郎 智恵子抄より  発行所株式会社新潮社  昭和41年11月10日発行




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