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秋の詩 ・・・ 賢治

2013/ 09/ 16
                 
宮澤賢治 秋

江釣子森の脚から半里
荒さんで甘い乱積雲の風の底
稔った稲や赤い萓穂の波のなか
そこに鍋倉上組合の
けらを装った年よりたちが
けさあつまって待ってゐる

   
恐れた歳のとりいれ近く
わたりの鳥はつぎつぎ渡り
野ばらの藪のガラスの実から
風が刻んだりんだうの花
……里道は白く一すじわたる……
やがて幾重の林のはてに
赤い鳥居や昴(スバル)の塚や
おのおのの田の熟した稲に
異る百の因子を数へ
われわれは今日一日をめぐる

   
青じろいそばの花から
蜂が終りの蜜を運べば
まるめろの香とめぐるい風に
江釣子森の脚から半里
雨つぶ落ちる萓野の岸で
上鍋倉の年よりたちが
けさ集って待ってゐる


・日本詩人全集 20 宮澤賢治 新潮社刊・所収

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