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秋の詩 静雄

2013/ 09/ 20
                 
伊藤静雄 百千の

百千(ひゃくせん)の草葉もみぢし
野の勁(つよ)き琴は 鳴り出づ
哀(かな)しみの
熟(う)れゆくさまは
酸(す)き木の実
甘くかもされて 照るに似(に)たらん

われ秋の太陽に謝す



伊藤静雄 夏の終り

夜来の颱風(たいふう)にひとりはぐれた白い雲が
気のとほくなるほど澄みに澄んだ
かぐはしい大気の空をながれてゆく
太陽の燃えかがやく野の景観に
それがおほきく落す静かな翳(かげ)は
……さよなら……さやうなら……
……さよなら……さやうなら……
いちいちさう頷く眼差のやうに
一筋ひかる街道をよこぎり
あざやかな暗緑の水田(みづた)の面(おもて)を移り
ちひさく動く行人をおひ越して
しづかにしづかに村落の屋根屋根や
樹上にかげり
……さよなら……さやうなら……
……さよなら……さやうなら……
ずっとこの会釈をつづけながら
やがて優しくわが視野から遠ざかる


日本詩人全集 28 伊藤静雄・立原道造・丸山薫 新潮社刊・所収


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