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祖父母の人生を思う 作家から

2013/ 12/ 22
                 
 HONライン倶楽部 百田尚樹の巻

 昨日、私の作家デビュー作である『永遠の0』の映画が公開された。物語は神風特攻隊として亡くなった祖父はどんな男だったのかを、現代に生きる若者が戦友を訪ねて調べるというものだが、実はこの小説が出版されたのは7年前の2006年だ。
 実はこの小説を書いているとき、私の父は末期ガンで余命半年と宣告されていた。その1年前に伯父の1人がやはりガンで亡くなっていた。父も3人の伯父も第2次世界大戦のアジア・太平洋の戦場で「大東亜戦争」を戦った男たちだった。その時、「ああ、あの戦争を戦った男たちが日本から消えていくのだな」と思った。
 幼い頃より、父や伯父たちから戦争の話はいつも聞かされていたが、父は私の子供たちにはついに戦争の話は一度もしないで死んだ。従兄弟たちに聞いても、「そういえば、親父は孫には戦争の話はしなかったなあ」と言った。そう、実は多くの戦争体験者たちは子供には戦争を語っても、孫たちにはほとんど語っていないのだ。60年という年月は記憶と思い出を隔絶させていたのだ。
 私が『永遠の0』を書いた動機はそこにあった。神風特攻で亡くなった主人公は私の父の世代である。そして彼の孫は私の子供の世代である。つまり私は物語の中で二つの世代を結びつけたいと考えたのだ。
 『永遠の0』を読んでくれた若い世代がネットやブログで「おじいちゃんたちに、なんで話を聞いておかなかったんだろう」という感想をアップしているのを見ると、切ない思いがするのと同時に、彼らが祖父母の人生に思いを馳(は)せてくれたということを嬉(うれ)しく思う。
 映画は素晴らしい出来で、歴史に残る傑作と思う。



 語りのうまさ 多彩な作品
 今年の本屋大賞に選ばれた『海賊とよばれた男』(講談社)が上下巻計170万部、映画化もされた『永遠の0』(講談社文庫)が380万部と、当代有数のベストセラー作家への階段を一気に駆け上がった百田尚樹さん。その勢い同様、熱い思いのこもった投書が多数届きました。

・『永遠の0』(講談社文庫):千葉県館山市の52才女性さん、「戦争ものだし、すごいベストセラーなので敬遠していた」「語りのうまさに途中でやめられなくなった」。福島県会津若松市のん15才女性さん、「臆病者」とさげすまれても家族のために「死ねない」と言い続けた祖父がなぜ、特攻を志願して死んでいったのか。やがてあきらかになる真実に多くの方が号泣しました。大阪府枚方市の38才女性さんは、「この本は立派な反戦小説だと思います」。
・『影法師』(講談社文庫):横浜市の69才女性さん。〈磯貝彦四郎殿は亡くなっておられました〉。将来を嘱望されていた男が、どうして不遇の死を遂げたのか。その理由に心を揺さぶられた。「私が死んだら棺に入れてほしい」と息子さんに伝えたほど。
・『幸福な生活』(祥伝社文庫):埼玉県川越市の48才女性さん。宇都宮市の67才男性さん。「最後の1行で『おおっ』と声を上げてしまうほどの急転直下の結末」。
・『風の中のマリア』(講談社文庫):新潟市の62才女性さん。「種族のために一心不乱に働くハチの健気(けなげ)さに夢中になり、このストーリーで人間の失ったモノを見つけられたような気がします」。


・・・『輝く夜』、『モンスター』、『海賊とよばれた男』は、小説のタイトルは載っていましたが、内容を語っていませんので、補足いたします。
・『輝く夜』(講談社文庫・太田出版刊『聖夜の贈り物』を改題、文庫化):5つの短編集が収められています。何れもクリマスのときのことです。『永遠の0』に続く二作目です。解説―「語りの人」―で、岡聡は、「百田尚樹が小説を書く上で強烈に意識し自身でも表明していることがある。〔希望のある話を書きたい〕ということだ。今の時代にこれほど明快に小説の目的に「希望〕を語る小説家は珍しい。だからこそ百田尚樹はそう思って小説を書いているし、そのために小説を書いていている。」と記述しています。

・『モンスター』(幻冬舎文庫):整形美女の狂おしいまでの情念の物語。解説は中村うさぎ。「そして、ヒロインはついに美貌を手に入れる。喉から手が出るほど欲しかった男たちからの賞賛、女たちからの羨望を、彼女は一身に浴びるのだ。…」と書いた5行後に、「しかしまぁ、美女となったヒロインに対する男たちの態度は、なんと滑稽に描かれていることだろう。…」とも述べています。

・『海賊とよばれた男』(講談社):昭和28年、サンフランシスコ条約からまだ1年にも満たない時代に、日本の小さな石油小売会社が、大英帝国と強大な国際石油メジャー相手に、真っ向から戦いを挑んだ。なぜか、歴史から消し去られた「日章丸事件」。主人公の熱い思いがストレートに伝わってきます。


・『ボックス!』(講談社文庫、上下巻):讀賣新聞〔HONライン倶楽部・百田尚樹の巻〕担当記者「好対照な幼なじみ二人が、同じ高校のボクシング部に入り、共に成長する様を描く熱い熱い青春ドラマ。リング上の臨場感と、揺れ動く二人の心情描写の見事さに、ノックアウトされました」。

ひゃくた・なおき
 1956年、大阪生まれ。放送作家としてテレビ番組「探偵!ナイトスクープ」などを担当する。50歳になる直前の2005年暮れ、「昔なら人生50年、もう終わりやん、僕の人生」と思い一念発起。作家になる決心をして『永遠の0』を書き始め、翌06年、作家デビューを果たした。

  2013年(平成25年)12月22日(日曜日) 讀賣新聞



永遠の0   影法師

幸福な生活   風の中のマリア

輝く夜   モンスター

海賊とよばれた男・上   海賊とよばれた男・下

ボックス・上   ボックス・下

・・・

次の3冊は今回の「百田尚樹の巻」に推薦されていませんでしたけれど、何れも読み応えのある作品でした。一行書きで紹介します。
・『夢を売る男』(太田出版」:本の出版を夢見る人間たち、一人ひとりの物語。…出版業界のタブーもなんのその…
・『プリズム』(幻冬舎):「解離性障害」を根っこにとらえた恋愛小説?…
・『錨を上げよ』(講談社):疾風怒濤の青春小説。まるで百田尚樹自らを語った自分史のような2400枚に及ぶ長い長い物語。  


夢を売る男   プリズム

錨を上げよ・上   錨を上げよ・下




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